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マーケットは地球!
飛躍を続ける「ミクロ発條」の挑戦

マーケットは地球!
飛躍を続ける
「ミクロ発條」の挑戦

2020.04.01

株式会社 ミクロ発條

MIKURO SPRING co.,Ltd

株式会社ミクロ発條は1954年に創業し、カメラ用のばね生産をしていました。今では電子機器や自動車部品、医療機器など様々な分野の精密ばねを作り、世界的に活躍しています。さらにボールペンのペン先に使われているばねは国内外トップのシェア率。グループ全体で600名を超える従業員を抱え、ばね業界の世界一を目指している企業です。

ミクロ発條 のここがスゴイ!

微細化にこだわる匠の技術力!
ここでしかできないものづくり

「うちの技術はばねではなくワイヤー加工です。1本の線を切るのでもうちの仕事。ワイヤーを操るという意味で考えれば、マーケットは広がるんじゃないかな」

そう語るのは、株式会社ミクロ発條の代表取締役社長・小島さん。そもそもばねとは、「物体の弾性又は変形によって蓄積されたエネルギーを利用することを主目的とする機械要素」と定義されており(※)、その形状から様々な役割を果たす、“縁の下の力持ち”のような存在です。 

そんなミクロ発條の自慢は、なんといっても小さくて細く精密なばね。髪の毛が直径0.08㎜に対して、ミクロ発條の一番細いばねは線径0.015㎜の材料で作った外径0.06㎜のものにも及びます。小さければ小さいほどばねの扱いは難しく、ピンセットで少し強く掴めば変形してしまうほどの繊細さです。

デバイスの小型化などを背景にICチップが小さくなるにつれ、微細なばねの需要は増えてきました。特にミクロ発條の柱となる事業のひとつである半導体の検査装置に使うばねは、この5年で半分くらいにサイズダウンしたと言います。さらにオーダーの中には、ひとつのばねでは荷重が出ないから、ばねの中にもうひとつ、もっと小さいばねを入れたい、なんていうものも。微細さや耐久性などの要求に応じて、材料や形状の特性を駆使するのだそうです。

緻密に作られた極小のばね

そしてもうひとつの柱であるボールペンに使うばねは、国内トップシェア!ボールペンのばねと言えば、カチっと上部を押してペン先を出す時に作動するばねを想像しがちですが、ミクロ発條が高いシェア率を占めているのは、もっと小さなペン先のボールを支えるばねです。実はここに微細なばねが入り筆圧によって動くことで、書き味を滑らかににじみやすくしているのです。実際に見せてくださいましたが、肉眼では螺旋が確認できないほど小さなばねでした。 

こういったばねを作るには、「ツール」と呼ばれる、ばねを巻き付ける部品をまず作る必要があります。この工程もばねが小さくなるほどに手作業が多くなるので、匠の技術がなければ完成しません。

「材料があって機械があって自分が思った通りのばねができるかどうかは、最終的には自分の手調整みたいなところがすごく影響するんですね。顕微鏡で見ながら、“1000分の3ミリ大きいぞ”とか、そういう世界。ばねを加工する側にとってはツールの作りこみが一番難しいところでもあり、やりがいでもあるのかな、と思います。小さくなればなるほど、うちにしかない匠の技術が光る。ここが一番の強みかもしれません」

SUWAデザインプロジェクトにも携わった工機部・グループ長の小林さんが、そうお話してくださいました。

ばね作りについての思いを熱く語る小島社長

そして匠の技術はもちろんのこと、会社としての設備などハードな部分についても、オンリーワンを目指しているという代表取締役社長の小島さん。

「『うちでなきゃできない』技術を可能にする設備は、持っていなくてはいけない。そのために日々技術を磨いていくのはもちろん、機械の効率化・レベルアップを図ったり、量産のノウハウを使ったり、日々改善しています。唯一無二のソフトとハードを維持していくことで、われわれは未来に備えているのです」

さらに小島さんは、お客さんから来たオーダーが困難でも“NOと言わないこと”を大事にしていると言います。高い要求が来てもそれ以上を達成するために、社内でも受注とは別の目標を設けているそうです。それはなんと、世界一小さいばねの製造業者として、ギネスブックに載ること! 

「通常だと納期があって苦しいけれど、自分たちの中で別の目標を作れば楽しいじゃないですか。色んなアイデアが出るし、皆で議論できる。それで相対的な技術も上がってくる。そういうのは続けていきたいですね」

※…日本工業規格のJIS B 0103(ばね用語)による

たくさんの機械が並ぶ工場

ミクロ発條 のここがスゴイ!

脳に留置する塞栓コイルを開発 “人の命を守るばね”への想い

さらに次なるステップとして、小島さんはミクロ発條の持つ精密ばねの技術を、医療の現場で活かしたいと決意しました。

「医療用の脳の動脈瘤に留置する塞栓コイルを、5年前から信州大学と共同開発しています」 

多くは機構部品として、製品に発生する動作を補助する存在であるばね。ですがこの塞栓コイルは、開発したコイル自体が商品そのものという、ばねの会社にとってはとても珍しい事例です。人間の身体に入るような繊細な部品であることから、直接お医者さんと一緒に開発したいと考えたという小島さん。お医者さんからのフィードバックを受けながら、塞栓コイルで特許を取り、今では医療器メーカーに採用してもらっているそう。

「全部で9社から結成され諏訪の事業者4社をふくむSESSAで、取り組みをしていたことがきっかけです。この取り組みは、もう7~8年目やっているかな」

SESSAとは、世界的に優れた精密加工技術を持つ日本の中小ものづくり企業や医療機器メーカーなど9社が、医療機器の開発に挑んでいるネットワークのこと。

「医療器の仕事はなにかしらやっていきたい。会社を永続させていく中で世の中に一番必要とされている状態のものじゃないと残す価値がないと考えています。人の命を守るところに自分たちのばねやうちの技術が使われていというのがすごく魅力的だったし、そういう意味では医療用のビジネスはどれだけ時間がかかってもひとつの柱にしていきたいですね」

さらにそうなった時には、部品をいかに安く作るかよりも、いかに自分たちのばねを使うことによってお医者さんが楽になって術中の事故がなくなるか、などそういうところに貢献していきたい、と熱い想いを語ってくださいました。

検品も工場にある機械で行います
ミクロ発條のオリジナルキャップ

ミクロ発條のこともっと知りたい!

これからの取り組みはありますか?

「実は諏訪市役所の斜め前の土地を購入して、3年以内にミクロ発條の工場ができます。工場の中に何を作るのか、今考えているところです。単純に工場をひとつ作るのではなく、あそこにミクロ発條が来たから街が明るくなったよね、とかそういう風になればと思って考えています」

地域に貢献できるような発信源になりたいと語ってくれた小島さん。ものづくりが好きな人たちが多い諏訪ならではの名物スポットになりそうです。

シンボルマークの意味

ミクロ発條のいたるところで見かける、可愛らしいブルドッグのロゴ。このシンボルマークについて、うかがってみました。

「私の父である3代目の会長が社長になった時に、皆で夜飲みながら仕事の話をしていたんです。その時に“食いついたら離さんぞ”という意味を込めて、決めました」

商標も取っているというこの愛らしいキャラクター。新しい工場が出来た際には、是非グッズなども発売してほしいものです。

社長のライフワークを教えて下さい

実は趣味のトライアスロンに力を注ぐ小島さん。今は主にロングの大会に出場しています。

「僕は目標を決めないと何もしなくなるので、目標とする大会を決めてエントリーしておくんです。そうすると、ロングの場合だと大体3カ月くらい前から準備し始めないと気持ちよく完走するのが難しいので、大会があるシーズンはずっと運動していることになりますね」

37歳頃までメリハリを意識せずに仕事に奔走していたという小島さんは、無理がたたって身体を壊してしまいます。その時に、某TV番組で芸能人がトライアスロンをゴールしているところを目撃して、始めてみようと決意したそう。

「頭もスッキリするし、仕事にもいい影響が出ました。やっているうちに面白くなって、友達もできて、もう10年やってます」

ミクロ発條オススメのSUWA

スナック 園

ミクロ発條の代表取締役社長・小島さんのおすすめスポットは、諏訪のスナック街にある「スナック 園」。「いつも人におすすめするんですよ。麻婆豆腐が美味しくて、派手なおじいちゃんとおばあちゃんがやっているお店。カラオケも歌えて、諏訪で撮影された映画のロケ地にもなっています。うちは忘年会とか新年会の後に使ったりしますね」とのこと。諏訪のスナックカルチャーを体験しに、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

  • 住所:〒392-0026 長野県諏訪市大手2丁目16−5
  • 営業時間:平日PM7:00~AM3:00 、金土PM7:00~AM4:00
  • HP: http://sono.sinsyu.net/

会社情報
所在地 〒392-0023 長野県諏訪市小和田南22番6号
交通アクセス JR上諏訪駅から車で約7分
ホームページ http://mikuro-spring.com/
電話番号 0266-52-3550
事業概要 精密小物ばねの製造
主な取引先 電子部品、半導体、文具、自動車、医療、などあらゆる分野

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