ものを語る

人とのつながりがうんだランプシェード 
~板金技術の限界を超えて~

人とのつながりがうんだランプシェード 
~板金技術の限界を超えて~

2024.05.13

つながりがつながりを生み、誕生したランプシェードの名は「SAI-SIS」

(株)エイワ機工は、精密板金技術を用いて「金属板から欲しいを形に」をコンセプトに自社製品の開発販売を行う「EiSist事業部」を2021年に設立。
開発した「焚火台 TKB」は諏訪市のふるさと納税で人気の返礼品となっています。そんなエイワ機工さんですが、新たにランプシェードを開発しました。その名も「SAI-SIS」。今回はEiSist事業部の中谷さんと藤森さんに開発ストーリーをお伺いしました。
趣味から高じたSAI-SISの誕生

自分でも作ってみたいという気持ちから誕生したランプシェード

ランプシェード初号機

「アウトドア商品を展示販売会に出展する際、TKB以外のものも持っていけたらいいね。」とEiSist事業部で話に上がりました。そこでTKB開発者である藤森さんに白羽の矢が立ち、ランプシェードが開発されました。

「SAI-SIS」の名前の由来は、さいころの“さい”、彩の“さい”、フランス語で6を意味する“シス”から来ています。

お披露目のイベントではTKBとともに、精密板金技術が施されたランプシェード「SAI-SIS」を販売し、デザイン性も相まって出展先などで反響を呼び、キャンパーの目に留まる結果になりました。

SAI-SISを広めるためには・・・

「SAI-SIS」の制作を手掛けるうち、いくつかの課題に突き当たることになりました。

エイワ機工では業務用の製品をメインで作っているということもあり、あまり一般消費者向けの製品への馴染みや知見がなく、大衆に受けるようなデザインを自分たちで考えるには限界がありました。

また、シェード内部にあるランプは大手アウトドア製品会社の既製品を取り付けて使用する形となっており、アウトドアグッズになじみがない顧客には手に取りにくいという課題もありました。

SAI-SISアップデートのための転機

連携が生む発想の転換

デザイナーと作り上げたランプシェード

壁に直面する中、令和5年度産業連携事業補助金(コレパクト@SUWA)を使ったデザイナーとの連携の話が舞い込んでき、取引先の企業さんからランプを扱う岡谷の企業エーピーエヌ株式会社(以下APN)さんを紹介していただく機会がありました。

これを転機に今まで持っていた「全てのものを板金で作る」という発想を転換し、異業種コラボによる製品のアップグレードは躍進を遂げることになりました。

デザインについても長野県デザイン振興協会さんの紹介の元、5人のデザイナーと連携し作り上げました。

話し合いで見つけた自分たちでも知り得なかった技術

デザイナーとのコラボは目から鱗が落ちることばかりで、大変刺激的で成長に繋がる出来事になったと藤森さんは感じたそうです。

デザイナーとの度重なるやりとりの中、提案されたデザインをもとに実際に板金に落とし込み、初めて気づく自社の技術力もあったそうです。提案されるデザインは緻密で今までにない細かさで加工をする必要があり、加工上、熱で変形してしまうということもありました。しかし心折れることなく、加工する順番を変えるなどの工夫を凝らし、ついに成功することができました。

初号機のような統一感のあるグラフィックデザインから、作品ともいえるようなデザインのランプシェードができあがったと完成時は思ったそうです。

それぞれの英知を集結させたランプシェード「SAI-SIS」

”板金屋”ならではの贅沢な出来栄え

板金加工はエイワ機工、台座は目黒工芸社、ランプはAPNのものを使用

ランプシェードの素材はチタン・アルミ・真鍮の3種類があります。チタンと真鍮は加工難易度が高めでこれらの素材を採用する所が少ないからこそ挑戦した製品です。

“板金屋”ならではの贅沢な素材で作られています。

アルミへの色付けは一般的な塗装での色付けではなく、アルマイト加工という製法で色付けされたオリジナリティーあふれるものになっています。チタンの色付けにもこだわり、一般的に販売されている製品のようなマット加工ではなく、電流によって発色する方法を採用し、グラデーションがかかった美しい色合いを表現しています。

ランプは「1/fのゆらぎ」を売りにしているAPNさんのライトとセットで販売。台座も諏訪市内でアクリル加工を営む目黒工芸社さんとコラボし、ライトの光を美しく透かしだす作りになっています。

ほぼ立方体のランプシェードは10センチ四方、厚さ6ミリに分解することができ、持ち運びも容易にできます。

完成後もさらにつながる人との縁
岡谷レイクウォークで行われたSUWAプレミアム展示販売でのEiSist事業部の様子

完成した「SAI-SIS」は多くのイベントに出展され、特にコアなキャンパーの心を掴みました。

イベント参加は特に人とのつながりを感じた出来事で、異なるブランド同士で話をしたり、商品を手に取るお客様に宣伝をしたり、目の前で自分が作った作品が売れるなどの経験をしました。購入者からの感謝の言葉を伝えられることもありやりがいを感じたといいます。

商品化を経てイベント出展をしていくうちに、藤森さんがきっかけで立ち上がったEiSist事業部は、一人また一人と協力者が増えていき今では6人になりました。

社内外で注目度が上がっていく中で、イベントを通しての受注やPRにつながる出来事など、ひととのつながりは異業種との交流を生み、さらに商品はアピール性の高いものへバージョンアップできるといいます。

レーザー加工機器
レーザー加工機器
「特大焚き火台のTKB-GRAND」
「特大焚き火台のTKB-GRAND」

モノがたりに参加した
立役者からのコメントComment

株式会社 エイワ機工 藤森 宗一郎

趣味全般がアウトドアで、アクティブな休日を過ごしているそうです。

profile

エイシスト事業部開発室長 藤森 宗一郎さん
長野県諏訪市出身。
大学卒業後の数年間、佐久市の製造業に従事。その後、地元諏訪のエイワ機工へ就職。

趣味はキャンプ、バイク、スノーボード。

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