「手と手」、「思いと思い」、そして
「福祉と経済」も「カサネル」。
森の工房あかね舎の「CASA.NEL」ブランド
「手と手」、「思いと思い」、そして
「福祉と経済」も「カサネル」。
森の工房あかね舎の「CASA.NEL」ブランド
「手と手」、「思いと思い」、そして「福祉と経済」も「カサネル」。森の工房あかね舎の「CASA.NEL」ブランド
取り組みを支援してきた産業連携事業補助金。
今回の開発モノがたりでは、平成27年度、28年度に渡り産業連携事業補助金
を活用し、新たな商品を作るだけでなく自社ブランドも創出した、障がい福祉サー
ビス事業所「森の工房あかね舎」代表の井上さんに、そのきっかけや思いについてお
聞きしました。
実は、この「森の工房あかね舎」を立ち上げた平成27年4月から、いえ、もっと言うと、あかね舎を運営する母体の「NPO法人ふぉれすと」が事業を始めた平成26年から、「鹿の革を使って何かモノ作りたいな」と思っていました。
なぜ「モノづくり」に取り組んだのかというと、地域の課題を解決する作業を仕事にできると考えたからです。地域の課題とは、前に長野県の関係者の方から、「野生鳥獣を管理する上で、鹿の革はそのまま捨てられてしまう」という話を聞いていたので、「その革を使って何かできないか」、と。
そのような背景があったので、事業に取り組むにあたり、最初の相談先は長野県と思っていました。ですが、身近に補助制度や事業展開に詳しい方いらしたので、事前に確認してみたんですね。すると、「その事業内容なら、市の産業連携推進室に相談したほうが良いかもしれないね。補助金も活用できるから紹介するよ」とアドバイスをもらうことができて。
これがきっかけになって、産業連携推進室と繋がりました。
きっかけは産業連携推進室だったんですね
そこで、自分の思いとして、「作った製品を、障がい作業所の括りとして販売するのではなく、どうすれば商品として流通に乗せられるか。そのためには、どのように事業を進めるべきか」、相談してみたんです。
その課題に、産業連携推進室の担当職員の方が一緒になって考えてくれて。そして、自分たち福祉サイドからの視点だけではなく、一般的な目から見た視点でのアドバイも得られました。
何より、自分としては、まず福祉を前面に出して売るのではなく、それはあくまでもサブにして、商品そのもので勝負したい気持ちがありました。福祉作業所でも、一般の流通経路の商品として販売し、後になってから「実は福祉だった」と思ってもらえれば。そうした思いがきっかけになり、素材やアイデアと色々な物に繋がっていきました。
ブランド化を進める上で、大変だった点や苦労した点はありましたか?
もう一点、あかね舎が立ちあがった時から、探していたことがありました。
私たちが作った製品を、まっさらな目で一緒に商品化してくれるデザイナーです。
ただ革製品を作ることで終わらせるのではなく、鹿製品と何かを組みわせて、それらをブラッシュアップしたい気持ちがありました。
こちらの気持ちについても、「そのように“製造”と“ブランド化”と目的が異なる2つのプランなら、産業連携事業補助金だと2年に分けて補助が利用できます」と、担当職員の方がアドバイスしてくれたんです。
それで、平成27年度と28年度に渡り事業を進めて行くうちに、繋いでくれたデザイナーがクローバーデザインさんでした。
クローバーデザインには、次年度以降もランクアップできるよう、ロゴだけでなく、パンフレットも作ってもらいました。それだけねなく、Facebookを活用した情報発信の仕方、ブランディングのやり方まで教えてもらえました。
今振り返って見ても、産業連携事業補助金が無ければできなかった事業だと思います。
それに、何より皆で面白がって進められたのが大きいですね。本当、楽しかったです。
そして、「カサネル」ブランドの誕生
ブランド名は「CASA.NEL」。「カサネル」です。
ブランド名が「カサネル」に決まるまで色々な案が出ましたが、その中から人の手と人の手が重なるイメージで選びました。
そして、「カサネル」ブランドロゴのデザインは、手と手を重ねたイメージをデザインしました。重ねるのは手だけではありません。思いと思いも重なるイメージです。
それに、ロゴができてブランド化されたことで、施設の利用者の皆さんも自信をもって商品を作れるようになったんです。
平成29年度に長野県で開催された「第67回全国植樹祭」の記念品の公募があった時ですが、思い切って応募したところ、県外来客者用の記念品として「鹿革コインケース」が採用されもしました。
他の応募者の中には、自分たち以外でも昔から製造に取り組んでいる別の事業所もあったので、初めは「無理だろうな」と思いながらも、ダメもとでトライしたんです。
その分、記念品に選ばれた時は、やりがいにも繋がりましたし、もちろん、実際に作成する利用者さんも、一層やりがいを持って普段よりも勤務時間伸ばしてくれて、皆で対応しました。
ブランド化で、知名度のみならず販路も拡大
こうして「カサネル」ブランドが誕生しましたが、これも、ロゴを作成してブランド化まで見据え、流通も含めて商品の販路を広げたかったからです。
そのような思いもあったので、「ふぉれすと」が立ち上がったのと同じ年度に諏訪市が開催した、平成27年3月のクリエィティブ交流会に顔を出してるんですよ。その場で、色々な業種の人と出会い、デザイナー、バイヤー、上社ドライブインさん、ホテル紅やさん等、様々な方と名刺交換ができて、顔合わせの機会も得られて。
この出会いがご縁になり、あかね舎の商品も上社ドライブインや諏訪湖サービスエリアのイベントで、出展させてもらえたきっかけになりました。
それ以外にも、福祉バザー以外に出展できる機会が広がったので、補助事業の活用と色々な関係者に繋いでもらいありがたい思いです。
今回の事業をきっかけに、諏訪実業高校にも繋がりが広がったことは大きいと感じます。諏訪実タウンへの仕入れから始まり、授業の一環で生徒のデザインが商品化という流れを経て、3年目を迎えました。生徒さんと利用者さんが一緒になって、革製品を作るまでになったんです。
他にも、金融機関の人も注目してくれて、クラウドファンディングを進めてくれたり。これも事業として面白かったですし、利用者さんと一緒になって夢中になって取り組みました。
中には、周りから「無理だろう」と思う人もいましたが、様々な利用者さんがいる中で、縫ったりラッピングしたり、色々な形でコツコツと関わりを拡げたので、仕事の幅も広がりました。
振り返って見ると、森の工房あかね舎は平成27年に開所してから今年で6年目を迎えますが、今まで皆のステップアップになるよう走り続けてきたかな、とも思います。
今後は、時間をかけてでも、小さな商品の種類を増やしながら、地に足をつけて進んでいきたい気持ちもあります。
そして、利用者の皆さんで取り組んでいることを、もっと外部に発信したいです。
利用者さんも増えているので、多くの方に、物作りに関わって欲しいですね。
モノがたりに参加した
立役者からのコメントComment
諏訪市産業連携推進室(当時の担当職員) 岩波恵一郎さん
また、井上さんを中心に皆さんがとても前向きに事業を進めて下さっているので、自社ブランドができただけではなく、あかね舎自体の認知度の向上と新たな仕事を呼び込む「相乗効果」ももたらされています。
この事業に関わる中で、あかね舎に伺うたびに新たな発見や事業の進捗が感じられ、とても幸せな時間でした。
今後の展開も期待しています!
profile
市職員として、産業連携推進室に平成27年度から平成30年度まで所属。
その間、産業連携事業補助金だけでなく多くのプロジェクトに携わり、関係者の思いに応えながら丁寧に支援にあたったため、今でも事業者さんから感謝の声が聞かれます。
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