ものを語る

美しい佇まいのあかりと共に過ごす上質な時間を
 〜吹きガラス工芸と光学技術の融合〜

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 〜吹きガラス工芸と光学技術の融合〜

2024.01.18

吹きガラス工芸+光学=新たなアートのかたち

今年度2回目のSUWAプレミアム認定商品審査会を経て、LED光源のアートピースランプが新たに認定商品に加わりました。商品名は「Tesseluce(テッセルーチェ)」。
諏訪地域で生み出される「吹きガラス工芸」と、同じく諏訪地域で培われてきた精密産業の「光学技術」を組み合わせ、現代アート作品として作り出されました。
ものづくりを通じて地域の魅力を発信する。そんな想いを胸に活動されているプロジェクトチームに、その開発ストーリーを伺いました。
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ガラスと光が織りなす美しさ
認定商品に加わった「テッセルーチェ」。ガラスの造形には、イタリアの歴史的技法「ヴェトロ・ア・レッティチェッロ」※が用いられています。

今回認定されたアートピースランプの「テッセルーチェ」。
「吹きガラス工芸と光学技術を融合した新たなアートのかたちを探求する」というコンセプトのもと、3つの特長を備えました。

〈ヴェトロ・ア・レッティチェッロがもたらす造形美〉
シェード(カバー)部分には吹きガラスが用いられていますが、イタリアのヴェネツィアで生まれた歴史的技法である「ヴェトロ・ア・レッティチェッロ」を採用し、吹きガラスそのものの妙なる曲線美はもちろん、ガラスの素材内部に包含された精妙な網目文様と気泡は、芸術的な価値を高めています。

〈内部の輝き/外部の陰影〉
ガラスシェードの内部空間には優美なあかりが灯ります。しかし、輝く部分には光源のLEDはありません。ガラスシェードの内面反射を利用して一点に光を集め、そこで発光しているかのように見せている虚像の輝きなのです。
そして、ガラスシェードを透過した光は、ガラスの素材内部に包含された網目文様と気泡により、外周部に繊細な螺旋状の陰影を映し出します。

〈あかりの振る舞い〉
独自の技術により、あかりに揺らぐ機能を持たせました。一般的に、揺らぎには和みや癒しの効果があると言われ、プログラミングにより周期的な揺らぎを再現することもできます。しかし、テッセルーチェには周囲の環境変化、つまり声の強弱であったり笑い声であったり“周りの音”に反応して揺らぎ、明滅する機能を持たせました。周期的ではない、テッセルーチェ自らが、その場その場をタイムリーに感じて判断する、いわば、人間と共に生活しているかのような能力を持たせたのです。

こうして、吹きガラス工芸と光学技術の融合により生まれたアートピースランプは、イタリア語で「織りなす」を意味する「TESSERE(テッセレ)」と「光」や「輝き」を意味する「LUCE(ルーチェ)」を組み合わせ、「Tesseluce(テッセルーチェ)」と名付けられました。

※ヴェトロ・ア・レッティチェッロ
レースガラス技法の中でも、最も難しい技術を要する技法とされている。
棒状の透明ガラスの中心に、一本の白色ガラスが入ったガラス棒(ケーン)。これを何本か並べて加熱し、付着させる。右巻き、左巻きに平行するレース文様の素地を一枚ずつ作り、それらを重ね合わせることで網目文様を造形。また、出来上がった格子の一つ一つに気泡を封入している。
ヴェトロ・ア・レッティチェッロの特長であるガラスの素材内部に包含された精妙な網目文様と気泡。
ヴェトロ・ア・レッティチェッロの特長であるガラスの素材内部に包含された精妙な網目文様と気泡。
棒状の透明ガラスの中心に、一本の白色ガラスが入ったガラス棒(ケーン)。中央にある無色のケーンを使用しています。
棒状の透明ガラスの中心に、一本の白色ガラスが入ったガラス棒(ケーン)。中央にある無色のケーンを使用しています。
輝く部分には光源のLEDはありません。ガラスシェードの内面反射を利用して一点に光を集め、そこで発光しているかのように見せています。
輝く部分には光源のLEDはありません。ガラスシェードの内面反射を利用して一点に光を集め、そこで発光しているかのように見せています。
ガラスシェードを透過した光は、ガラス素材内部に包含された網目模様と気泡により、外周部に繊細な螺旋状の陰影を映し出します。
ガラスシェードを透過した光は、ガラス素材内部に包含された網目模様と気泡により、外周部に繊細な螺旋状の陰影を映し出します。
想いを胸に

開発ストーリーの主役は、プロジェクトチームの代表である照明士/建築士の櫻井 謙次 氏。
もともと諏訪市内の企業で光学機器の開発・設計に従事していましたが、「地域の歴史や文化、地域に由来する素材、地域で培われた伝統工芸や産業技術、その地域に暮らす人々」と、自身が携わっていた「光学」を組み合わせ、新たなアートの形を探求し、具現化した作品を通じて地域の魅力を発信したいと考えていました。そんな想いを実現するには、会社勤めのままでは難しい、家業の建築の仕事もあるからと一念発起し、2021年独立、起業したのです。
これが、まだ見ぬテッセルーチェ誕生に向けた第一歩となったのです。

そして、出会い

光学と何を組み合わせようか模索する中、櫻井氏が辿り着いたのは吹きガラス工芸でした。
自分の想いに協力してくれる作家さんはいないだろうかと、諏訪地域の人に聞いたり、インターネットで検索したりする中、2022年11月、吹きガラス作家の加倉井 秀昭 氏と出会ったのです。
もともと繋がりのない2人でしたが、櫻井氏が、「こういう物を作りたい」と加倉井氏の工房に飛び込み提案したのがきっかけとなりました。加倉井氏も、「光学(LED)との融合は面白い、新たな挑戦になる」と心動かされ、手を携えることを決めました。
ほどなくして2022年12月、試作品作りからプロジェクトはスタートしたのです。

加倉井氏の工房 スクラッチ アンド ノイズ(諏訪郡富士見町)
加倉井氏の工房 スクラッチ アンド ノイズ(諏訪郡富士見町)
試行錯誤を経て

商品開発には、およそ1年の歳月を要しましたが、技術面では様々な課題を乗り越えなければなりませんでした。

吹きガラス工芸では、ケーンの本数を何本にするのかはもちろん、太さや長さをどうするのかが課題となりました。それにより、仕上がるガラスシェードの大きさ、厚み、網目文様の細かさが左右されるからです。ケーンそのものから造形している加倉井氏は、太さや長さ、本数を変えては、繰り返しガラスシェードを作りました。他にも網目文様の内部に入る気泡の大きさや位置を安定させることは、繊細な温度コントロールが求められる難しい作業になりました。

光学技術では、ヴェトロ・ア・レッティチェッロの造形美を最大限に引き出す光を作り出すことが課題となりました。せっかくの吹きガラスも、光の入れ方を間違えてしまうと、その美しさを損なうからです。そして、その光には、諏訪湖の花火や諏訪地域の高原に広がる星空、諏訪湖の水面に反射した光のように、心地良さや美しさのあるキラキラとした輝き「人の心を魅了する光のチカラ」をプラスしたいと考えました。そのためにも、光の色の選定や眩しさの調整、ガラス内部の曲率形状とそれがもたらす反射の仕方、ガラスシェードを透過し外周部に投影される陰影のグラデーション、揺らぎなど様々な計算が必要になったのです。櫻井氏は前職で光学機器の開発・設計に従事していたとはいえ、まったく新しい独自の技術を開発しなければなりませんでした。

ガラスシェードの大きさ、厚み、形状などは、光学技術にも影響するため、加倉井氏と櫻井氏の連携も欠かせません。お互いに微調整を繰り返しながら、ようやくノウハウが固まったのです。

開発過程を振り返る加倉井氏(左)、櫻井氏(右)
開発過程を振り返る加倉井氏(左)、櫻井氏(右)
認知度向上、いずれはイタリアへ

SUWAプレミアムに認定される前の2023年7月。実は、信州ハンドクラフトフェスタ2023にテッセルーチェが出展されました。まだより良い作品を目指して試行錯誤が継続されている段階ではありながらも、ものづくりへのコンセプトやテッセルーチェの美しさと将来性が評価され、コンテストでサンプロ賞を受賞したのです。
「諏訪地域の誇り、愛情、技術、情熱が、異業種、異分野の人材との連携により、テッセルーチェという一つの作品になりました。夏にサンプロ賞を受賞し、今度はSUWAプレミアムに認定していただきました。この逸品を諏訪地域の魅力として広く発信するべく、これからも色々な機会に出展し、さらに認知度を上げていきたい。SUWAプレミアムと共に“諏訪”という地域ブランドの発展に貢献したいと思います。
また、イタリアのミラノでは、世界的な照明の展示会が開催され、開催期間中には世界各国から多くの人が訪れます。いずれはヴェトロ・ア・レッティチェッロの本場イタリアの展示会に出展したいと考えています。日本人でもこんなに素晴らしいガラス造形と光が作り出せるぞと、イタリアの人たちをはじめ、世界中を驚かせたいと思っています。」と、櫻井氏が笑顔で語ってくれました。

諏訪地域の色々なものが詰まったテッセルーチェが、どの様な形で世の中へ広がっていくのか、今から楽しみです。

モノがたりに参加した
立役者からのコメントComment

Tesseluce PROJECT 代表 櫻井 謙次

今回、吹きガラス作家の加倉井氏と連携し、一点一点とても繊細なものづくりをして、吹きガラスと光が織りなす美しさをアート作品と呼べる逸品に作り上げることができました。
光の魅力は、直に見てこそ感じるものが必ずあります。そして、光も音楽のように人の心の状態、体調、年齢、体験などの違いによって感じ方に多様性があります。現在SUWAガラスの里(諏訪市)で実物を見ることができますので、ぜひこの機会にテッセルーチェをご覧ください。

profile

【櫻井 謙次】写真右
・照明士、二級建築士
・2021年GEO ONE DESIGN(ジオ ワン デザイン)松本市に設立
・趣味 ものづくりについて考え楽しむこと、名建築巡り
・GEO ONE DESIGN インスタグラム https://www.instagram.com/geoonedesign/

【加倉井 秀昭】写真左
・吹きガラス作家
・2015年ガラス工房Scratch & Noise(スクラッチ アンド ノイズ)諏訪郡富士見町に設立
・趣味 バイク

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「 Tesseluce(テッセルーチェ) 」はSUWAプレミアム公式サイトより購入可能です

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激動する時代に不安を感じる、今の事業に変化がほしい、自社技術の可能性を拡げたい。
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