ものを語る

「楽しさが詰まった箱」を作るカホンメーカー ~CHAANY~

「楽しさが詰まった箱」を作るカホンメーカー ~CHAANY~

2024.01.23

カホンという楽器知っていますか?

カホン(cajon)はスペイン語で「箱」を指し、長方形の木箱を叩き音を奏でるペルー発祥の打楽器です。
当時、楽器を持てなかった人々が、箱(cajon)を叩いて楽しんだことがルーツとされています。
現在では民族音楽だけでなく、様々なジャンルで使われる世界中で愛されるポピュラーな楽器です。

演奏方法はカホンに座り、打面をたたくというシンプルなもの。たたく場所やたたき方で様々な音を出すことが出来ます。電源を利用しないので、ストリートライブでドラムの代わりに利用されることが多いようです。

そんなカホンを作るメーカーが岡谷市にあるって知っていましたか?
今回は2011年より「楽しさが詰まった箱」カホンを作り続けるCHAANYのカホン製作者の竹内聡さんに取材をしました。
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カホンを作ろうと思ったきっかけ

欲しい!でも買うお金が無い・・なら作ってしまおう!

カホン製作者の竹内聡さん。とても誠実でモノづくりに対しても真摯な印象を受けました。

自分は兄弟の中で末っ子になりますが、小さいころから兄や姉がピアノやギターなど色々な楽器に親しんでいるのを見ており、身近なところに音楽がある環境で育ってきました。

いつしか自分が楽器をやるならパーカッションが良いという思いが芽生え、知人がカホンを自作したという話を聞き、カホンという存在を知りました。

すぐにカホンの魅力に取りつかれて、「欲しい!」と思いましたが、当時は高校生で買うお金がありませんでした。

じゃあ自分も作ってみようと決断しました。その決断には兄の存在は大きかったです。ものづくりが得意な兄に手伝ってもらいながら一緒に初めてのカホンを作り上げることができました。

作ったカホンで兄と友人とユニットを組み、色々な所でストリートライブをしたことはとても良い思い出です。

 

アクリルカホンとの出会い

もっと自分好みの「音」を出したい。

製作中のカホン。CHAANYの代名詞になった打面がアクリルのカホンです。

高校卒業後、地元の製造事業者に就職しましたが、4年で退職しました。他にやりたいことが出来、専門学校へ進学するためでした。

その専門学校は北海道にあり、とても音楽が身近にある環境であることを知り、カホン愛が再燃し、進学前に自分の好きな音を出せるカホンを持っていきたいと思うようになりました。

色々調べていく中で、打面がアクリルという珍しいカホンに出会いました。特長はドラムに近い音が出るということ。これは木材にはなかなか出せない音で、自分が求めている音にぴったりでした。また、当時のカホンはどうしても地味なイメージがありました。そこでアクリル素材を使うことによって、見た目のインパクトが大きくカッコいいカホンを作れて、認知が広がるのではと思い製作に挑戦することにしました。

しかし、完成までの道のりはとても険しいものでした。アクリルという素材は加工段階でひび割れしやすい素材です。製作の工程では穴あけや塗料の塗布などがあるので、細心の注意を払わなければ、すぐに割れてしまいます。

また、アクリル単体は元々音が響かない素材です。そのため、弦の位置や本数、打面と弦の当たり方をどうするかなど細かな調整をしなければなりません。そういう意味ではアクリルはとてもデリケートな素材でした。

ここでも兄の協力を得ながら試行錯誤しました。本当に大変でしたが、苦労の末、ついにアクリル打面のカホンが完成し、カホンを抱え北海道に旅立ちました。

事業化してみようか?

韓国のアーティストの目に留まる

注文を受けて制作中のカホン。ミュージシャンから一般の方まで幅広い支持を得ています。

専門学校在学中に知人のご縁で、来日していた韓国のアーティストにお会いする機会がありました。その際に自分のカホンを見ていただいたところ、「私にもこのカホンを作ってもらえないだろうか?」とオファーを頂きました。

すぐさま兄に相談し、「これはカホン製造として事業になるかも?」ということでカホンメーカーとしての第一歩を踏み出していくことになりました。

専門学校卒業後、私は別の仕事をしていたのでカホン製作は兄がメインで時々お手伝いする形で携わっていました。

事業としてカホン製造をスタートしたものの、なかなか売れない時代が続きました。理由は当社のカホンの価格が高かったことです。当時、価格の安いシンプルなカホンが多く、高価格・高付加価値の商品が珍しかったので、なかなか楽器店に扱ってもらうに至りませんでした。

ファンや仲間に支えられ、ブレイクスルー

代表作Pedroの完成

代表作Pedro

しかし価格の安いカホンに切り替えていくのではなく、あくまでも品質を追求していくスタンスは変えませんでした。

いつしか大手の楽器販売店に取り扱ってもらうまでになりましたが、代表の兄は品質に満足していませんでした。

CHAANYカホンのユーザーからの声に耳を傾け、スピーカー職人にアドバイスを仰ぎ、家具屋さんから木工技術をどん欲に吸収し・・・改良に改良を重ね、品質・音質を追求していきました。

色々な人の支えのもと、転機となるCHAANYの代表作「Pedro(ペドロ)」(現在販売休止)が完成しました。販売店の方から良い評価を受け、販路が拡大していきました。

その後、私もCHAANYに入社しカホン製作に携わっていくことになりました。

お休みからのリスタート

コロナウイルス流行やウッドショックの影響を受け、一旦カホンの製造は休止せざるを得ませんでした。休止期間中はトレーラーハウス・雑貨販売など新たな挑戦を始めました。

しかし、国産木材調達の目途が立ったことから2023年秋にカホン製造を再開しました。9シリーズある既存製品はそれぞれにファンがいるため、徐々にリニューアルして再販していきたいです。

今回、販売再開スタートしたCheerfulシリーズはSUWAプレミアムの認定を受けました。いずれはSUWAプレミアム限定モデルも作れたら良いと思っています。

Cheerfulはその名の通り、「明るい・楽しい」をコンセプトに作っています。そのため、木の材質を柔らかく・軽いものを選定し、コンセプトに合うような音作りを心掛けています。

カラーはナチュラルカラー・ダークカラーの2色
カラーはナチュラルカラー・ダークカラーの2色
打面はアクリル素材でクールな印象です。
側面は木目が綺麗な国産のシナ合板を採用、弦はギター弦8本を使用しています。
打面はアクリル素材でクールな印象です。 側面は木目が綺麗な国産のシナ合板を採用、弦はギター弦8本を使用しています。
前面(アクリル)と後面(木)の2種類の音を出せることが特長です。
前面(アクリル)と後面(木)の2種類の音を出せることが特長です。
底部。工具不要でツマミで弦の調整ができます。
底部。工具不要でツマミで弦の調整ができます。
最後に

長野県はギターの生産量日本一を誇る楽器の生産地で、カホンづくりにも適した地域です。カホンもギターのような誰でも知っている楽器になるよう、ユーザー数を増やすべくメーカーとして活動していきたいです。

地元とのかかわりとしては、小学校の授業や音楽教室等で採用され、認知度を広める活動をしています。諏訪で作られている楽器と言えばカホンが連想されるようになれば良いと思っています。

モノがたりに参加した
立役者からのコメントComment

CHAANY 竹内 聡

カホン演奏者からのCHAANYの評価はアクリルを使用したクールなデザイン、丁寧な仕上げ、安定感、そしてCHAANYにしか出せない唯一無二の音など様々な賛辞が並びます。
休止後のリニューアルを待ちわびたファンはたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
5.6台カホンをお持ちのユーザーが最終的にたどり着いたのがCHAANYだったというお客さんもいらっしゃるようです。所有しているカホンの中にはかつてお手本としていた海外メーカーのものもあったことにとても嬉しかったと語っていました。

profile

1988年岡谷市生まれ。

趣味はフットサル、筋トレ。愛称はCHAA(ちゃあ)。幼少期に「さとし」がうまく発音できず、「ちゃとし」と言っていたことから親族やご近所さんに「ちゃあ」と言われるように。

CHAANY(チャーニー)の由来は聡さんのお兄さん(ANY)が事業を始めたことからCHAANYとなったそうです。

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