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先先代から受け継ぐ「太」い理念は、諏訪の笑顔にとって「養」分となる。
有限会社「太養パン店」奥村 透 社長さん(2020/7/27インタビュー)

先先代から受け継ぐ「太」い理念は、諏訪の笑顔にとって「養」分となる。
有限会社「太養パン店」奥村 透 社長さん(2020/7/27インタビュー)

2020.08.11

今年で創業104年目という、諏訪市末広に所在する「太養パン店」さん

今年で創業104年目という、諏訪市末広に所在する「太養パン店」さん。
7月からは、古材等を利用した「リノベーション」により、店内を新装しリニューアルオープンしています。
今回は、奥村社長さんに、長らく事業にあたって来られた経営理念や、諏訪の持つ地域の魅力等について、お聞きしました。

創業104年目とのことですが、事業を継続する上での理念や思いについてお願いします

仕事場で、「こだわり」について語る社長さん。パンを焼く機材も、「こだわり」ある貴重な品です

まず、当店を経営する上でのベースになる考え方としては、先先代の言葉があります。「花は、声無くして人を招き、優れた品は、声無くして人を招く」、です。この言葉に沿って、事業を続けてきました。

なので、こちら側から特別にコマーシャルや営業活動はしなくとも、良い品を作り続ければ、必ず人は来てくれるという思いがあります。それから、良質なパンを世に送り出して、世の人を笑顔にしたい、という思いですね。

現在、当店のパンはユニーさんや角上さんでも販売してもらっていますが、それもこちらから声掛けしたわけではなく、バイヤーさんが当店のパンを気に入ってくれたからなんですよ。なので、個店だと、大手の事業者さんと異なって、どうしても美味しい製品を作る数には限りが出ます。そこは、バイヤーさんから当店にも配慮してもらいながら、生産数の調整に応じてくれるメリットにも繋がります。

そして、職人の技の範囲で作れる範囲、厳選した材料等での範囲で作るという点は、個店としてのこだわりですよね。ここは、やはり大手さんとの差として、外さないようにしています。

それに、パンは時間をかけて作るのがとても大事です。当店では、自家製の天然酵母を使用し、ヨーロッパの伝統的製法で作っていますので、味にも自分の「こだわり」といった個性が出ます。

もちろん、そこは機械化等で時間も効率的にできる可能性もありますが、パン生地は機械任せにできない仕込みが必要です。

たとえ時間がかかっても、自分として「こだわり」を持ち続けたい面です。「こだわり」は店舗の存在意義にも繋がりますし、お客様に喜ばれるものでもあると思っています。

太養パンさんにとって諏訪市の魅力とは何でしょうか?

店内には、諏訪の魅力の一つ、「SUWAプレミアム」の逸品であるスピーカーも

何といっても「水がおいしい」点でしょうね。パン製造には小麦を大量に使用しますが、その次に大量に使うのは「水」です。現在の店舗の周辺では、諏訪の酒蔵さんでも使用している水と同じ水源のものが利用できます。水の味はとても大事です。水源が異なってしまうと、味もガラッと変わってしまいます。

それに、諏訪は天候も清らかですから、その点からも幸せな気持ちになりますよね。

北海道に居住する友人が諏訪に来た時のことなんですが、「ここ(諏訪)は地域の素材や魅力に溢れているね。それなのに、なぜ諏訪の人はその魅力を活用しようとしないのだろう?」と言われたこともあります。水や天気以外にも、諏訪は魅力で溢れてますよね。

とはいえ、諏訪市は商業的に見て新規事業者にとっては厳しい土地柄とも思いますので、諏訪で成功するなら、日本のどこでも成功できるとも思ってます(笑)。

それからもう一つ。心のこもったサービスができる街であるのも、諏訪の魅力だと思います。同じ材料、同じ技術でパンを作るなら、あとは、「どれだけ心を籠められるか」、そこで最後に差が出ると思っています。

ここで店舗のリノベーションもしたのですが、デザインや工事をお願いしたリビルディングセンタージャパン(リビセン)さんでも、心のこもった仕事やこだわりで工事してくれました。

そのリノベーションですが、どのような作業でしたでしょうか?

リニューアルに合わせ、高く開放的になった天井です

当店の直接販売は、コロナの影響もあって4月途中から休業に入りました。そこから1か月半かけて、店舗のデザインや作業工程の計画を立てる期間が1か月半だったので、実際に着工したのは6月1日からです。

これはリビセンさんの手法ですが、実際のリフォーム工事の行程も、施主がリビセンさんと一緒にチームを組んで取り組むんですよ。そのため、全ての作業をリビセンさんに任せるわけではなく、様々な条件の中で自分達でも準備に協力する必要があります。ちょうど、帰省していた家族も総出の作業になりましたね。長い時は、1日で8時間くらいは工事作業をしたと思います。床面の作業では、ずっと膝をついて古材を床に打ち付けることもありました。普段の生活だと、そうした動きはしないですから、とても疲れた日もあったんです。

実は、工事中は店舗での直接販売は休んでいたんですが、角上さんや諏訪湖サービスエリアへの卸売りは継続していたんですね。なので、通常のパン製造と並行しながら、リノベーションの作業もしていましたから、結構大変な時期でしたね。

ですが、古材を利用すると、新建材では出せない味わいがありますし、壁も手作業で塗ったので小手の跡がそのまま残ったりしてますが、その分、かえって手作り感も出ます。

振り返って見ると、「リノベーション」というと、工務店さん側に全てお願いする形が一般的だと思いますが、リビセンさんとは一緒に作業することで色々な技術を学ばせてもらいました。それこそ、建物の基礎部分さえ出来上がってあれば、それ以外の作業を自分でもできそうなくらい(笑)。これは思い出になる作業になりましたね。

それだけでなく、金融機関からの融資でも、コロナの影響で普段よりも有利な条件で利用できて、まさに「ピンチをチャンスに変えられた」と思います。

休業期間は長くなりましたが、決して無駄な時間にならなかったと実感しています。

最後に、今後の目標についてお願いします

店舗内に並ぶ様々なパン。地域に笑顔を届けます

ここで店舗もリニューアルして新しい環境となり、パンの見栄えも良くなったと感じます。最高の環境が揃いましたから、「あとは良い品質のパンを作る自分次第だな」、ということで使命感も感じています。

今から30年前は、現代よりも家庭でパンを食べる習慣は少なかったですが、ここで、大よそ1世代分の時が経過したこともあり、人々の食習慣が代わったと感じます。この先ですが、夕食の食事にもパンが並ぶ時代になるよう、食事用のパンをもっと売りたいと思いますね。職人としてですが、日々心のこもったパンを焼き、地域に笑顔を拡げることを目指しています。そのためにも、違いが分かる品質のパンを作るのが使命だと思っています。そのパンを、皆さんに食べて欲しいですね。

本日はお忙しい中、大変ありがとうございました

(2020/7/27 諏訪市産業連携推進室担当者がインタビュー実施)

「太養パン店」さんのこともっと知りたい!

リニューアルした店舗について、もう少し教えて頂きました

 店舗のデザインについてですが、現状で考えられるコロナ対応という面も考慮しました。
 従来の店舗がセルフサービスのシステムだったので、お客様ご自身でトングやトレーでパンを直接選んで頂いていたのですが、そのやり方だと器具の消毒がどこまでできるか懸念もあります。
そこで、全てこちら側で消毒できるよう、自分たちは「対面販売」のスタイルにしたかったので、そのイメージを事前にリビセンさんに伝えたんですね。すると、「魔女の宅急便」に出てくるパン屋さんの雰囲気で、直ぐにデザインしてくれました。
 こうして対面販売のスタイルにすると、注文を通じてお客様とのコミュニケーションも取れます。その効果なのか、お客様でも距離を開けながら注文の順番を守って下さったり、店内が密にならないよう外で待って下さったりしています。

「イートインコーナー」も新設です

また、以前よりお客様から要望があったイートインコーナーも、このタイミングで設置しました。フリーWi-Fiも新規にしたんですが、1時間くらい利用される方もいらっしゃいます。 
 他にも、店舗側の奥にかかる暖簾の刺繍は岡谷市のfabスペース(アナログ・デジタル工作機器が利用可能な施設)である「ハナレ」さんを利用しましたし、店舗内の座椅子は下諏訪町の「Zatowa」さんにお願いしました。リビセンさんだけでなく、地域の色々な人の力を借りることができて、さらに良い店舗になったと思います。

「太養パン店」さんオススメのSUWA

AMBIRD(アンバード)さん

「新しくできたカフェで、ウチの店から国道20号線側に歩いていくと分かりますよ。太養パンで買ったパンの持ち込みもOKで、自家焙煎のコーヒーと一緒に飲食もできます。

とても美味しい珈琲で、自分も大好きです」(奥村社長さん)。

そこで、早速「AMBIRD(アンバード)」さんを訪ねてみると、オーナーの黒鳥さんが快く対応してくれました。

「アンバードは、昨年10月に東京から移住して始めたんです。オープン初日は台風が諏訪に来た日というタイミングでしたね(笑)。当店の珈琲はブレンド等8種類用意していますが、淹れると琥珀色になります。アンバードという店名の由来ですが、琥珀色は英語でアンバーです。それに、自分の名字の鳥がバードですから、この2つの単語を合わせました。また、琥珀はパワーストーンでもあります。このパワーストーンのように、アンバードを訪れた人が元気になって欲しいという気持ちも込めました」(黒島オーナーさん)。

ちなみに、アンバードさんの店内も、デザイン面では「リビセン」さんが担当されたとのことです。

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