ひとと会う

かつて、白鷺も寛いた
「癒しと“おもてなし”の宿」
(有)諏訪観光ホテル 「ホテル鷺乃湯」 
4代目社長 伊東 克幸さん 女将 伊東 敦子さん
(2020/7/9インタビュー)

かつて、白鷺も寛いた
「癒しと“おもてなし”の宿」 
(有)諏訪観光ホテル 「ホテル鷺乃湯」  
4代目社長 伊東 克幸さん 女将 伊東 敦子さん
(2020/7/9インタビュー)

2020.08.12

舞い降りた白鷺も寛いだという「癒しと“おもてなし”の宿」として、伝統あるホテルの鷺乃湯さん。本日は、4代目社長さんと女将さんのお二方にお話をお聞きしました。

それでは最初になりますが、歴史のある旅館を運営するについて、思いや理念からお教えください  

歴史ある鷺乃湯さんの4代目社長さんと女将さん(笑顔が素敵ですね)

まず旅館業ですが、少し口幅ったい言い方になりますが、文化や伝統を継承する存在だと思っています。当旅館も、あと2年で創立110周年を迎えますが、今に至るまで諏訪の地の文化や伝統を、信州の豊かな自然とマッチして継承して参りました。

旅館でお客様にお過ごし頂く一番は、やはり畳の部屋で布団を敷いて、温泉の風呂や料理を楽しむことです。これが、日本文化にあった過ごし方だと思います。

ですが、時代と共にお客様のニーズは変わってきていますので、例えばお休みになるにしても布団からベッドへ、また、食事をお召し上がりになる方法も、畳の部屋に座るのではなく椅子とテーブル席へなど、そこは、変化に応じながら適応させて来てもいます。

とはいえ、当旅館のお客様へのサービスとしては、諏訪湖といった自然や建物全体の雰囲気、そして料理などがありますが、中でも、やはり「おもてなし」がサービスの中心になるのは昔から変わらない伝統だと思っています。

鷺乃湯さんの「おもてなし」とは、どのような考え方でしょうか

サービス全般についてですが、実は女将に任せてあります。

館内におるかと思いますので、女将にお聞きしてもらった

ほうが良いですね(社長さん、女将さんを呼びに行かれる)。

お、お忙しいところすみません💦。改めまして、女将さんから「おもてなし」で大事にしている点をお教えください

鷺乃湯さんの見事な庭園。こちらも、見ているだけで癒されます

自分も女将ということで、サービス事業者向けの勉強会やセミナーに出席して学んだこともありますが、講義の内容を仕事の中で実践してみても、その通りにいかないことも多いですね。こちらが良かれと思って対応したサービスに対しても、お客様によってはクレームを頂戴することもあります。時には「もう辞めたい」と思うこともありますが、そんな時には不思議とお客様から電話があって、「女将さん、今度泊まりに行きますので宜しく」と言われるんですよね。そうなると、お客様があってこそ続けたいという気持ちになります。とても豊かな仕事です。

当旅館としては、お客様にくつろいで頂けるよう、「お客様が癒される宿」を目指しています。当旅館の温泉が独特な成分であることもありますが、日々のストレスが軽減されたお客様を見送ると、自分たちスタッフも潤う気持ちになります。

そのスタッフですが、ホテルや旅館には様々な役割のスタッフがいます。どこのセクションのスタッフが欠けても「おもてなし」はできないと思っています。

自分も含めですが、そのスタッフも4代目社長から学ぶことも多いと感じています。

お客様のお部屋回りをする際にも、「お客様には平等に接しないといけない」と指摘を受けたりしますし、また、仕事の中でこちらが落ち込んでいると、「(お客様に接する仕事なので)そのような気持ちは自分の中で消化をして下さい」と言われることもあります。そのような、大局を見る姿勢が素敵だな、と思いますね。それに、何より人のことは決して悪く言わない点です。鷺乃湯の4代目に相応しい社長だと思っています。

ありがとうございます。それでは社長さん。

4代目ということで、鷺乃湯さんの歴史についてお願いします

庭園内に置かれた足湯。たしかに、温泉の色合いが特徴的ですね

当旅館は、明治38年に当時の国鉄が開通したのがきっかけで駅からの誘客が増えたこともあり、明治44年に創業しました。それまでこの辺りは一面田んぼだったそうです。

ですが、明治時代には、当時諏訪で唯一となるコンクリートの大浴場を設置したり、創立の頃より凝った作りをした旅館だったようです。

現在の本館を新しく増築したのは平成3年ですが、そこから3年くらいして先代の3代目社長でもある父が亡くなりました。その際に先代の後を継いだので、自分は4代目になります。社長になってからは、もう30年近く過ぎようとしています。

先ほどお話しした当旅館の理念も、先代の姿から学んだ面が多いなと思っています。

それに、先代は歴史を大事にする人でもありました。平成に建てられた現在の旅館の中にも、実は以前の昭和初期の旧本館で使用していた部材も生かされています。

他にも、古くから温泉に重きを置いていまして、当旅館の温泉は100%自噴で賄っているのも特徴です。温泉の成分によるため、湯の色もウーロン茶というか、ウイスキーというか、他ではない色合いでもあります。

後ほど拝見しても良いでしょうか?

はい、お客様のご都合もありますので、可能な範囲でよければ。

(詳しくは、「ホテル鷺乃湯さんのこと もっと知りたい!」コーナーでご覧下さい)

ありがとうございます。それでは、事業を継続して来られて社長さんが感じる、諏訪の「強み」や「良いところ」はどんな所だと思われますか?

諏訪湖畔は自然に溢れています

そうですね、当旅館の他、諏訪湖畔に並ぶ温泉街がJR上諏訪駅に近く、そのため駅前の中心市街地にも近い点ですね。そのため、地元企業からもアクセスしやすい立地ですし、これは、例えば山中や高地にある温泉とは異なる点だと思います。

他に良い所といえば、何といっても豊かな自然です。お客様でも、旅館に到着され眼前に諏訪湖を見る瞬間に、諏訪に来られたことを実感される方が多いと感じますし、食事面でも山の食材に恵まれている土地柄です。

周辺には霧ケ峰高原もありますし、お客様の中には、当旅館を拠点にして松本や安曇野、善光寺まで周遊される方もいらっしゃいます。

それに、文化面ですね。諏訪大社もありますし、御柱祭りもあります。

地域の文化といえば、酒蔵が多い点もそうですね。今では定着している諏訪5蔵の飲み歩きですが、今から20年位前に酒蔵とホテル街とで「何かコラボ出来ないか」、と話しがあったのがきっかけでした。飲み歩きの日は、日本酒のお好きなお客さんのご宿泊でいっぱいになります。他では、美術館や博物館を訪問される方が多いのも諏訪の特色ですね。

それでは、現在の状況についてはいかがでしょうか?

「今年は桜やつつじも、例年以上に綺麗に咲き誇りました(社長さん)」という庭園。今年は、見ごろの時期がコロナによる自粛期間と重なり残念です

当旅館は、ご利用の中で20%くらいが地元のお客様のご宴会や結婚式、結納などで占めています。都心部のシティホテルの役割も担っているイメージですね。宿泊されるお客様の割合としては、長野県内から30%、首都圏から30%、残りは新潟県等の近い県や中京圏から見えられます。

営業面についてですが、長野県からの自粛要請に合わせ休業している期間もありましたが、その後も県から示された方向性に合わせ、6月3日からの営業再開、6月19日からは県を跨いだ移動緩和への対応など、ソーシャルディスタンス等への配慮も守りながら、段階的に通常の形に戻してまいりました。

ここで、ようやく例年の50%くらいまでに回復したという状況ですね。

コロナウィルスの影響へはどのように対応を?

これは新型コロナウィルスの影響を受ける前からですが、以前に比べて、団体のお客様メインだった状況から個人のお客様にシフトしています。そのため、旅行代理店等のエージェント経由よりインターネットサービスや当社のホームページからの予約が増え、その割合も、今では40%近くに達しています。

当旅館では、諏訪市内のホテルの中でも、比較的早いうちから各個室に室内風呂を配置したこともあり、個別のお客様への対応は早かったのと思っています。こうしたケースのように、お客様のニーズの変化にうまくジョイントしていければ、と思いますね。

そうした効果のためか、当旅館ではリピーターの方のご利用も多い。有名人の方も、お忍びでは無く、普通に来られることもあったりします。

「旅行のスタイル」全体の将来像はどのような方向性になるでしょうか?

周遊するには、色々なスポットあるのも諏訪の魅力です(写真は霧ヶ峰のニッコウキスゲです)

母からは、「昔はこうしていた」と言われることもありますが、旅の形は時代に合わせて変わります。昨年と今年を比べても、全く様子は違ってきていますね。ネット社会が進み、携帯電話やスマートフォン等新しい出費があり、若い人にとっては旅行に出にくいのか?とも思われます。

また、数年前にあった軽井沢のバス事故の影響もあってバス単価も上がっていますし、今回のコロナの影響でその傾向は続くのではないでしょうか。

また、若い人の中に自家用車離れもあるそうですから、お客様がどのような交通手段で来訪されるのかも含め、様々な状況を見据えながら対応する必要があると感じています。

また、コロナウィルスの影響が大きいインバウンドのお客様ですが、当旅館でのインバウンド比率は全体の5%でした。この数字も当分戻らないものと思いますが、FIT(海外個人旅行)の流れもありますから、より個人のお客様に特化して取り込めるよう、コロナの終息後を見据えきちんと対応したいと思っています。

とはいえ、これまで大事にしてきた団体のお客様も継続していく必要もあります。

将来となると中々読みにくい面もありますが、お客様の層がますます極端に分かれるのではと感じています。今は少ない状況ですが、実際に連泊する方も増えていらっしゃいますので、単価の高額な層の方は周遊でのんびり過ごすのか、あるいは安い単価で月に何度も来訪される方、というイメージですね。

広い館内をゆっくり歩けるスタイルも良いですね

また、男性にも女性に共通している点ですが、1人旅のスタイルを楽しむ方も増えています。そのようなお客様の特色ですが、CDやビデオを持参され、自分の世界を1人で過ごしている方が多いですね。昔は「十人十色」と言われていた嗜好が、お1人の中に百色くらいの行動パターンがあるイメージですね。それだけ多様化してきています。

他には、「泊食分離」の傾向も出てきています。昔は、旅館が食事を提供するスタイルが当然でしたが、お客様が地元の居酒屋やお蕎麦、鰻といった食事に出られるパターンですね。こちらは18%くらいの割合でいらっしゃいます。この流れも段々と変わっていくのではと感じています。

最後になりますが、お二人はお互いにどのような存在でしょうか。

庭園をバックに撮影させて頂きました(当日は小雨の中でしたが、撮影の時には雨が止んだんです)

いやー、朝起きてからずっと一緒ですからね、中々考えたことはなかったですが。うーん、私(社長さん)にとっては「戦友みたいな」存在、でしょうか(笑)。

私(女将さん)にとっては、「必要不可欠な」、という存在です(笑)。

本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。

(2020/7/9 諏訪市産業連携推進室担当者がインタビュー実施)

ホテル鷺乃湯さんのこともっと知りたい!

最後に、鷺乃湯さんの館内を案内して頂きました

 1階大浴場の露天風呂には、昭和12年に建築された旧本館の車寄せ(玄関前に設置される雨除け)が移築されています。また、同じく旧本館玄関ホールの天井は和風の格天井だったのですが、現在はお客さまが食事を召し上がる料亭内に移築されています。移設する際は、いったん解体してから組み直したそうですが、木材は収縮するのでとても苦労されたとのこと。
 また、旧本館で使用されていた部材としては、和室の「違い棚」も、客室の一部に再利用されているそうです。

 

置物も、絵画も、庭園も、神様も大事にされている鷺乃湯さん

 他にも、館内には至るところに有名人の方のサインや絵画、そして伝統的な物が“さりげなく”置かれています。
 中でも女将さんイチ押しなのが、4代目社長さんのお母さまが持って来られたという、うさぎの置物。女将さんも「癒されますよね」とのことですが、立川流の彫刻師による逸品だそうです。
 建物の外に目を向けても、四季折々の花で見事な庭園には水神様が祭られ、さらに旅館の鬼門には、お稲荷さんも祭られているそうです。
 しかも、鷺乃湯さん独自で御柱祭りもされるとのことで、社員やスタッフの皆さんだけでなく関係者も含め、約200人が参加される大規模なお祭りになり、里引きもする程の熱気だそうです。

 こうした、古いものや伝統あるものを大事にする鷺乃湯さんの姿勢からなのでしょうか、耳を澄ますと、館内では、色々とご利益がある不思議なお話もあるとか・・・。

ホテル鷺乃湯さんオススメのSUWA

伊東社長さんのおすすめは「諏訪湖」

やはり諏訪湖ですかね。当旅館の目の前なので、たまに湖畔を散歩したりするんです。自分にとっては、とても落ち着ける場所になっています。

この記事をシェアする

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • LINEでシェア

お問い合わせContact

「諏訪で新しいことがしたい」。そんな思いに応えるのが、わたしたちのミッションです。
激動する時代に不安を感じる、今の事業に変化がほしい、自社技術の可能性を拡げたい。
諏訪の技術を世界へと伝え、異分野と繋ぐことで
「ものづくり」をアップデートするお手伝いをさせていただきます。

contact_img