様々な活動に挑戦を続ける
「長野県内に唯一!の」ホビーメーカー
株式会社ピーエムオフィスエー
山口 晃 代表取締役
(2020/6/10インタビュー)
様々な活動に挑戦を続ける
「長野県内に唯一!の」ホビーメーカー
株式会社ピーエムオフィスエー
山口 晃 代表取締役
(2020/6/10インタビュー)
皆さんは、諏訪市推せん土産品の認定も受けている、「フィギュア諏訪姫」「プラスチックキット高島城」をご存知でしょうか。諏訪市公認キャラクターとして諏訪市の結婚証明書に使用されたり、広報すわに4コマ漫画が掲載されています。何より諏訪市の様々なイベントにも引っ張りだこの「諏訪姫」。今や、「諏訪姫」は諏訪市民のみならず、全国にもファンがいる人気者です。
高島城は昭和に復興されたお城ですが、国宝や重要文化財の指定を受けていないお城がプラスチックキット化されることで、お城マニアや模型愛好家にも大変注目されています。
今回はこれらを商品化に導いた、諏訪市沖田町にある、株式会社ピーエムオフィスエー 代表取締役の山口晃さんにお話を伺います。
それでは、なぜ諏訪姫のフィギュアや高島城のプラスチックキットをつくられたのか、経緯についてお聞かせください
弊社は今年、創立20周年を迎えたプラスチック製品やプラスチック金型製造を行っている会社です。金型は、生活に必要なプラスチック製品を大量に生産させるために必要なものです。もともと金型設計のみを行っていましたが、製品設計や金型製造まで行えるようにと、現在地に社屋を建て事業を拡大してきました。
しかし、約10年前のリーマンショックで、金型受注が激減し、新たな事業展開を探るために、様々な展示会を見にいきました。当時、工業系の展示会はやはり活気がありませんでしたが、唯一ホビー関係の展示会は、深夜から人が列をなして並ぶような熱気だったんですよ。しかも、その中には、それこそ何万円もするようなフィギュアを購入して行く人もいましたし。それを見て、「これを商売にしない手は無い」と思い、フィギュアやプラモデルの製作販売という仕事を始めました。
といっても、10年前の、まだ金型メーカーだった時代には、市内の企業と取引が無く取引相手は全て県外メーカーだったんです。市内で自社を知っている人は誰もいなかった状態ですね。そこで、地元の物を商品展開して地域を盛り上げる狙いもあり、始めたのが諏訪姫プロジェクトでした。
「諏訪市民の50%が知っている企業」を目標にして、諏訪姫のPRに取り組んだんです。もちろん、自分たちだけではPRにも限界があるので、イベントへの出展や、諏訪姫を着ぐるみにして諏訪市民の皆さんに売り込んでいきました。そうする事で、SNSで話題にしてもらったり、ツイッター等の口コミで広がってくれればいいな、という思いがありました。
他にも、東京2020オリンピックの新競技である「サーフィン」の代表選手を目指し、地元諏訪の代表候補にもなった女性選手のスポンサーも務めさせて頂きました。サーフボードに諏訪姫のデザインを施して、諏訪姫とともに、彼女の応援をしてきました。企業が応援していかないと、選手も実力が出せませんから。それから、マスコミ等の外部機関と繋がることも大事にしました。観光協会にも加入していますが、こちらも諏訪姫を広げるためですよ。製造業なのに観光協会に入っているのは中々いませんからね(笑)。
ホビーを手掛けて10年、ピーエムオフィスエーさんの強みや特徴について教えてください。
自社には、本社と四賀事務所、そして東京事務所と合わせて計40名社員がいて、そのうち、2割が金型製造に携わっています。その他の社員ですが、生産だけでなく、企画から、管理、マネジメントまで含めて、全て自前で賄っているんです。下請けではこの先の経営がどうなっていくか不透明ですし、「メーカーになって行かないといけない」と思う気持ちが大きかったですから。
そして、自社内にデザイナーが3名いますので、自分の所でデザインまで対応しているのが強みですね。
これは、デザイナーは社内にいないと、自社のクセやニーズを肌で感じることができないからです。その会社の持っている感覚をデザインして行かないと、その会社のコンセプトに合ったものができないと考えていますので。そして、「デザイナーは社内で育てるものだ」、とも思っています。
とはいえ、ホビー部門を始めた10年前は外部のデザイナーに委託していましたが、どうしてもデザイナーは自分の仕事に対するこだわりや、自分の作品へのプライドがあります。こちらから会社の思いを伝えても、その意向や細部への注文は伝えきれません。
そんなこともあって2年ほどで外部委託の契約を止めて、自社の社員がデザインを担当するようになりました。
最近だと、コロナの飛沫防止のためにフェイスガードも自社で製造しています。プラモデルみたいに、買った人が自分で組み立てられるようにしました。そして、自社デザインでパッケージまで一貫して生産しています。呼気が内部にこもらないよう、上の部分の通気性が良くなるように工夫もしてあるんです。これも、社内のコンセプトが一貫して社員にも共有されているから出来上がった物です。広告用のチラシもつくりましたが、これも、もちろん全て自前生産です。社員がモデルになって「自分の好きな使用方法でフェイスガードの写真撮ってきて」と指示したら、皆ちゃんと撮影してきました。こんな事も、外部任せにせず、社内で行っています。
やはり、こういった感覚的な面は、たまにしか会わない外部の人には伝わらりにくいですから。
こうした展開をしているのも、デザインや広告まで含めて行わないと、メーカーとして生きていけないという思いからです。それに、外部への発信も自分たちでやらないといけませんね。
発信方法も、コロナウィルスの影響もあって、宣伝の媒体イコール「動画」になってきています。動画広告も自分たちで作ったりアップして行く予定ですが、これも企画から含めて全て社員で作っていきます。
諏訪市内では、販路や売り方が課題という話も聞きますが、ピーエムオフィスエーさんで工夫された点などはありますか?
当初、販路を作るために当社が行ったのは、全国の問屋に売り込みを行ったことです。まずはブランドを知ってもらわないといけないですからね。商社では一括でお願いできても卸値を叩かれてしまいますが、問屋なら全国にありますので、全国くまなく知名度を上げるため、問屋からあたってみました。
そして大事なのは、5年から10年スパンで考えて、それを根気よく続けることです。
当然、成果はすぐに出ないので、そこは社長が先頭に立たないといけないと思っています。
「どうやって売るのか」、「販売会にはどのような内容でどんなイベントがあるのか」を調べたり考えるのは社員です。そして、製品の細部を設計し、それを実際に作るのは金型チーム。こうした流れを戦略的に会社が一体になってやらないといけません。社長はそれを後押しして、お金を出すのが仕事。でないと続かないんですよ。
ここまで来られるのに苦労された点は?
プラモデルメーカー・ホビーメーカーは、長野県内で当社だけです。当然、周囲には例がないし、もちろん前例もない中でスタートしたので、最初は苦労しましたね。
そして、新しいことをするには大変なことだらけ。銀行さんも、当初は「前例がない」ということで中々融資も難しかったですよ。今は実績があるから融資もそこそこ大丈夫になりましたけどね。
それに、製造業・工業系事業者には、当社がおもちゃの製造に取り組むことをよく思わない人が、当時は沢山いました。そこを我慢してでも踏み込めるか。そして、批判は同業者だけではなく、既存の取引先や顧客の皆さんからもありましたね。中には、「おもちゃを作ってるような会社と取引はしたくない」と言われたこともあったんです。でも、そこは打ち勝つ気持ちが無いと新しいことはできませんよ。それに、そこは、「おもちゃ」ではなく、「大人のホビー」を作っていると言ってますけどね(笑)。
それに、やるなら真剣にやらないといけません。自分達からコンセプト、計画、販売、広告まで含め、しっかり考えていかないとうまくいかないと思っています。
それでは、今後の展望についてお聞かせください。
東京では問屋に卸して販売していた販路がコロナウィルスの影響で店舗が休業している事もありますが、現状はネット通販頼みになっているところです。全体での売り上げ額は減少していますが、ネットでの売り上げは対前年比で倍増しました。もちろん、問屋を通すと卸値は定価より下がりますが、ネットの場合は定価の100%で販売できます。となると、ネットの販売個数が3割少なくても、売り上げ額ではカバーできる計算になりますので、そちらに活路を見い出して行きたいです。
とはいえ、鉄道模型は対面での販売の方が売りやすい傾向もあります。そこは、物によって売り方も変える必要がある事に気付きました。さきほど話したフェイスガードも、お年寄りなどにも売れていますし。
新社屋に移るというお話を新聞で拝見しましたが・・・?
これまでプラスチックキットの射出成型は外注(外部取引先への発注)がメインでした。でも、外注先が自社の製品だけ扱っているわけではなく、どうしても他社との関係で納期の問題が出てきます。そこで、自社で生産できるように考えて計画をしていました。ちょうど、こんな時期になってしまいましたが。
予定では、今年の11月頃に新社屋へ移転し、自社のショップでの販売も可能にします。
それに、やっぱり、メーカーにとってはハコ(社屋)は大事ですからね。ハコを見れば、「あ、メーカーだ」って外から分かりますし、見栄えも重要だと思います。でないと、人は寄ってこないですし、興味を持ってくれませんからね。
社屋だけでなく、以前別の工場だった建物も新しく改装して、外見を工夫する予定です。
さらに、工場見学も取り入れて観光面にも対応できるように、団体客にも来ていただきたいと思っています。見学・体験・販売の流れをコースにして、2時間くらいで周れるようにしたいですね。
わ、我々もお邪魔して良いですか?
是非(笑)。
今回のインタビューは、できたばかりの「SUWAデザインプロジェクト」というウェブサイトに乗せる予定です。
そのサイト、アクセス数はどのくらいなんですか?
い、いや、まだ開設したばかりで(💦)。
当社のHPは社員がブログを当番で書いていますが、サイトのアクセス数は
1日に2~3,000件しかない状態です。社員に対しては、「どんなこと
でも毎日書け!」と言っています。アクセス数を増やすには、更新頻度を上
げて、情報や内容が新しくないといけませんからね。
私たちも参考に頑張ります(💦)。
本日は大変ありがとうございました。
(2020/6/10 諏訪市産業連携推進室担当者がインタビュー実施)
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「諏訪で新しいことがしたい」。そんな思いに応えるのが、わたしたちのミッションです。
激動する時代に不安を感じる、今の事業に変化がほしい、自社技術の可能性を拡げたい。
諏訪の技術を世界へと伝え、異分野と繋ぐことで
「ものづくり」をアップデートするお手伝いをさせていただきます。
ピーエムオフィスエー(山口社長さん)のこともっと知りたい!
新社屋が茅野市さんの市内ということで、本社も茅野市さんに移ってしまうという噂も(💦)?
そうですね、建物の新築となると費用か莫大ですから。
諏訪市内でも、高速道路に近くて、国道20号線沿線で物件を探していたんですが、
なかなか良い立地が見つからなくて。
ただ、これまで諏訪市で活動してきていますので、製品の問い合わせも諏訪市の本社
に来ることが多いと思います。ですので、今のところ新社屋は茅野事務所で、本社は
諏訪市に残すつもりです。
○「ホッ💭」(産業連携推進室担当者)
㈱カーフィットさん
諏訪市豊田にある、自動車取扱店のカーフィットさんです。今日のインタビューの中で、当社も全日本ラリー選手権にレーシングチームとして参加したとお話ししましたが、その際にお世話になったのがきっかけです。モータースポーツの車両というのは、ラリー仕様に改造する必要があるんですが、ただ速くすれば何でも良いわけではなく、定められた規格の中に合うように調整しなければいけない。そして、我がレースチームの監督も務めてくれたんです。ラリーカーのメンテナンスやタイヤ交換、そして修理までお願いしました。
さらに、社用車の購入、メンテナンス等もお任せしていますし、社員もカーフィットさんに車両の購入や下取りをお願いしています。車のことなら全てお任せできますよ。
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