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「寒天でみんなを健康に!」
イリセンが起こす革命

「寒天でみんなを健康に!」
イリセンが起こす革命

2020.10.19

有限会社 イリセン

IRISEN co.,Ltd

昭和17 年に創業した茅野商店が、平成元年に改名して誕生したのが有限会社イリセン(以下イリセン)。寒天は食物繊維が豊富で、高血圧予防効果からアンチエイジング効果まであるスーパーフード。そんな寒天を幅広い年齢の人に1日1回は食べてもらいたい、という想いの元、地域の特産物である棒寒天のほか、寒天を気軽にそのまま食べることのできるスナック菓子などの寒天関連商品を製造・販売しています。

イリセン のここがスゴイ!

スープに入れる寒天、スナック…
構想を練って生まれた商品の数々

「私が携わりはじめたころ、寒天はいわゆる伝統食品でしかなくて、誰も寒天をもっと工夫して売ろうとは考えていませんでした」

そう語るイリセンの代表取締役・茅野さんは、スープに入れて具材になる寒天やそのまま食べる寒天スナック「おかしなかんてん」など、様々なアイデア商品を開発した寒天業界の革命児です。しかし、伝統産業を営む中でこういった商品を生み出すのは、簡単なことではありませんでした。

「作るだけ作って問屋に卸すっていう、昔ながらの流れが決まっていて。でもそのやり方が10年くらい前から、温暖化や原料である天草の不足で年々厳しくなっているっていうのは実感していました。そんな中で、とにかくうちは先を見据えてやってきました」

寒天といえば熱湯で溶かして、天寄せやヘルシーなスイーツなど、何かを固める時に使う材料というのが一般的なイメージです。比較的身近な食材ではありますが、棒寒天、糸寒天、粉寒天の3種類に分けられるのは、少し玄人向けの情報かもしれません。その3種の中でも、諏訪地方で作っているのは棒寒天。形を棒状に整えたもので、この土地の特産品にもなっています。しかし茅野さんは、棒寒天を取り巻く概念を根幹から覆していったのです。

規格から少し外れたはねだし棒寒天を「寒天狩り」にて販売している。市場より安くたくさん購入できると、リピーターも多い。

「一番最初に力を入れたのは、寒天を溶かさない状態でスープに入れる食べ方を流行らせること。地元のマルシェに何度も足を運んで、無料で試食を振舞って。そうすると若い方とかが発信してくれて広まりました。温かいスープにポンと入れれば、溶けずに具として食べられるんですよね。寒天っぽさもわかるし、粉状の工業寒天だとできない食べ方でもあります」

こうして温かいスープに入れて食べる寒天「かんた」が生まれました。寒天の新しい食べ方を象徴した商品です。諏訪市からの“推せんみやげ品”にも選ばれました。

さらにこの「かんた」は、実はロスとして出た寒天を使ったもの。棒寒天の製法には天日干しという工程があり、ここで乾燥する際にどうしても形の崩れてしまうものが出てくるのです。それは全体の3割にも及ぶとか。この3割は通常、問屋に安い価格で卸されたり、釜に戻して翌年の原料にしたりするそうです。「同じ手間かかってるのにそれやったら絶対もうからないと思った」と茅野さん。

「産業的に棄てていたものがまさかこんなものに生まれ変わって、ちゃんとした金額をもらえる。そんなエコな時代に寄り添った商品になったというのも、推せんみやげ品として評価された理由のひとつだと思います。これが売れて考えたのが、ロスでやるんじゃなくて、はじめから崩れてもいい寒天作りをすること。だから今は天日干しも、わざと寒天をクラッシュさせて干したりしてるんですよ。そうすると2月半ばまでが限界だった寒天作りが、3月までできるんです」

商品の試食もできる直売所
商品の試食もできる直売所
スナック菓子としてそのまま食べることのできる「おかしなかんてん」
スナック菓子としてそのまま食べることのできる「おかしなかんてん」

棒寒天は諏訪地方の低い気温を利用し、凍結乾燥させて作るもの。意図的に形を崩して干せば寒天ひとつひとつの表面積が増えるため、棒寒天より温暖な気候条件で寒天作りができるという理論です。

寒天事業に新しい風を吹き込む茅野さんが次に開発したのは、寒天をそのまま食べるスナック菓子。

「この会社に入った時からシンプルに思っていたのが、寒天は溶かさずにこのまま食べてもいいんじゃないかということ。だから、乾いた寒天を味のついたスープに染み込ませて再乾燥させるという加工をしてお菓子にしたんです。難しかったのは、形を保つこと。棒でなくてもあくまで寒天っぽい形にしたかった。寒天を売りたい場合は、溶かしたら形が認識されなくなってしまうので、勝てないと思っていました。素材はそれだとわかるように打ち出した方が売れ続けるから、形にはこだわりましたよ。8年かかったけれど、失敗も繰り返してやっと完成しました」

寒天を再乾燥させるという誰にもない発想の末に誕生したのが、スナック菓子としてそのまま食べることのできる「おかしなかんてん」です。味はしょうゆやコーンポタージュなど全6種。お酒のおつまみにも最適ですし、普通の寒天と同量の食物繊維も摂ることができます。

「新しい自社商品がひとつできたっていうのは大きいですね。今では棒寒天よりも贈答用として選ばれています。他にない商品ですし、県外から観光で来るお客さんには特に受けています」

寒天に対する熱い想いを語って下さった、イリセン代表取締役 茅野さん

イリセン のここがスゴイ!

来場者4000人の体験型直売所
寒天についた付加価値がすごい

「去年の冬も、ここに4000人来たんですよね。その前の年が1000人、その前は50人…」と言いながら、寒天作りの拠点であり直売所のひとつでもあるビニールハウスを見渡す茅野さん。直売所には「おかしなかんてん」などの商品はもちろん、毎年12月~2月には寒天の天日干し体験や寒天の量り売りなどが楽しめる「寒天狩り」もあります。

「こういう雄大な自然の中で作ってるということが付加価値に繋がると思うんですよね。だから体験型の直売所を始めました。現場を堂々と見せたかったんです」

寒天を田んぼに天日干しするのは、この地域特有の方法。伝統産業を現代風に変えるため、観光とのタイアップに注力したのです。見たことのない設備に驚き、天日干し体験を面白がるお客さんが大勢いたことで手ごたえを感じたそうです。

また、寒天に実質的な賞味期限がないことも、実績に繋がった大きな要因のひとつ。

「消費が遅くなっても、管理は楽なんですよね。野菜みたいに腐らないから、いつか売ればお金になる。それをわざわざ急いで安い金額で問屋さんに卸すのはもったいないっていうことをすごく感じているので、やはり直売を大事にしています。今はメーカーが強く出る時代だしインターネットもあるから、売れる方法はあるんですよね」

売り方、作り方すべてを変えてきたという茅野さん。一時期は問屋さんに供給ができず売り上げも大幅に下がってしまったそう。けれど「それをいつかやらないと」と、直売にコストを割いた茅野さんの勝負強さが功を奏して、今では直売の割合に比重をかけながらシフトチェンジをしています。

「世の中的には工業系以外の手作りのものってどれだけ付加価値をつけられるかだと思うんです。値段じゃ勝てないので…。寒天は健康な食べ物ということがベースとしてまずあって、加えて棒寒天はこの諏訪だけにしかないということが、すごくいい条件でした。今までそれを活かしきれてなかったからどうしても成功させたい、証明したいという想いでずっとやってきています。はじめは誰も相手してくれなかったから、エネルギーが要りましたけどね」

これまでの型
これまでの型
新しく改良された型
新しく改良された型
寒天作りが盛な時期には、多くの寒天がここで天干しされる

イリセン のここがスゴイ!

取材100本…寒天革命を起こした
元サッカー選手社長の革新的アイデア

「たまたま実家が寒天を作っていたけれど、元々継ぐつもりはありませんでした」

実は茅野さんは、元サッカー選手。大きな怪我をきっかけに引退して、イリセンを継ぎました。怪我の治療は3カ月の入院生活を要するもので、その間、寒天の底力に気付いたそうです。

「入院生活で筋肉が脂肪に変わって体脂肪率が高くなってしまうんですね。寒天はそれを改善してくれて。お医者さんも驚くほどの効果だったんですよね」

入院をきっかけに、寒天が持つ隠れた大きなパワーを実感した茅野さん。もっと多くの人に知ってもらいたいという強い気持ちと、今までとは違うやり方や新しいアイデアを使えばすごいことになるのではという期待で胸がいっぱいになった、とお話してくださいました。

そんな茅野さんは、働き方改革や温暖化対策など社会の流れにも意識を向け、製法や製造器具を変えてきました。その中でも象徴的と言えるのが、寒天を固める型の開発です。元から棒状ではなく角型の寒天「かんた」を作るためのこの型は、女性にも扱いやすい画期的な器具となりました。 

「従来の型に煮汁が入ると、女性にはかなり重いんですよ。これだったら女性でもできますし、寒天に手で触れることなくひっくり返せるんです。それと『かんた』は食べやすいように改良した結果、原料の濃度も半分くらいに変えています。濃度を薄くすれば水戻しも不要になるので、商品としてはむしろ良いものになったと認識してもらえるんです。これも、味がないのになぜ大量の原料を使ってカタチを作らなければならないのかという疑いから実践しました」

こうして温暖化による原料不足の問題にも、一石二鳥の回答を出すのがさすがと言ったところです。サッカーという、寒天とは全く違うフィールドから入ったからこそ、今までの伝統や常識を疑うことができたのだ、と教えてくださいました。

「寒天ってもったいないんですよ。他の素材を邪魔しない寒天だからできることがたくさんあるし、伝え方を変えればもっと生かされる商材なんです。業界的にも今までの売り方じゃ厳しくなってきているから、なんとかしなきゃなっていう使命感みたいなものもあるかな」

寒天でみんなを健康したい。その想いから、茅野さんは日々新たなアイデアを生み出し実現のための努力を続けている。

イリセンのこともっと知りたい!

今後の野望はなんですか?

「去年もテレビが22本、新聞とかラジオ合わせると100本くらい取材を受けました。結局メディアが取り上げるっていうことは、ほかの誰もやってないということ。だから産業全体でやればもっとよくなると思うんです。お客さんには“寒天いくか!”くらいの気軽な感覚で、この土地に来てもらいたい。それが今後の野望ですね」

“ここの土地は冬に来るとすごいぞ!”…地域全体をそんなイメージにしたいと語ってくれた茅野さん。敏腕経営者の確信的な発言に、諏訪の賑やかな未来が見えました。
まだまだ構想は止まりません。オフはあってないようなもの、と言う茅野さんは休日も仕事のことを考えているそう。

「マルシェの代表もやってるんですよ、大手マルシェっていう。それも結構周りの皆のやる気があって、休日とかも食事しながら話をします。自然と人が集まってくるようになりましたね、皆でどうやって盛り上げていくか考えるのが好きですね。将来的にはここのビニールハウスでも、大手マルシェやりたいな」

イリセンオススメのSUWA

車山

イリセンの代表取締役・茅野さんのおすすめスポットは、車山。諏訪市と茅野市の市境にある、霧ケ峰の最高峰です。「子供たちと一緒に車山で自然に触れています。ストレスもなくなって、新鮮な気持ちになるんです」。茅野さんがそう言うのも納得、車山一帯は車山高原と呼ばれ、トレッキングはもちろん、夏はテニスや冬はスキーなども楽しめるのです。さらに霧に覆われた霧ケ峰の幻想的な雰囲気は、一見の価値あり。

会社情報
所在地(本社) 〒392-0012 長野県諏訪市大字四賀2769番地
所在地(製造工場) 〒391-0301 長野県茅野市北山湯川1253番地
交通アクセス(本社) 諏訪インターチェンジから2km(約5分)
交通アクセス(製造工場) 諏訪インターチェンジから15km(約30分)
諏訪南インターチェンジから20km(約40分)
ホームページ http://kanten-irisen.com/index.html
電話番号 0266-52-0342
事業概要 寒天関連商品の製造・販売

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