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養鶏業の心強いミカタ、その名もチキンリフター

養鶏業の心強いミカタ、その名もチキンリフター

2025.05.08

諏訪市の令和6年度の新技術・新製品開発事業補助金の採択案件

チキンリフター

省力化装置・省力化機器の設計製作を手掛ける(株)リョーシン(諏訪市)が市の補助金を活用して、養鶏業者の皆さんを笑顔にする機械を開発しました。その名も「チキンリフター」。鳥を上げる機械?鳥を揚げる機械の間違いでは・・・?
養鶏業が盛んとは言えない、この諏訪の地でどのようにして作られたのでしょうか?
その製作秘話を追っていきます。

※新技術・新製品開発事業補助金:諏訪市の市内事業者が独自に、または大学等と連携して行う新技術・新製品開発に要する経費の一部を補助する制度。

2011年創業、気心知れた同僚たちと起業
社長の柳澤さん。冗談を交えながら和やかにインタビューに応じていただきました。

リョーシンは比較的若い企業で、従業員は10名ほど。

現社長の柳澤さんは当時、別の会社を経営されていましたが、60歳になるタイミングで辞任され、設立間もないリョーシンに入社しました。

様々なしがらみから解放され、心機一転、新しい挑戦を始めたかったそうです。

信頼できる少数精鋭のメンバーで、少しずつ実績を重ね業績を拡大していき、2024年に現拠点に会社を移転しました。

 

顧客開拓の極意

前職時代、柳澤社長は異業種交流会や業界団体主催の勉強会等に積極的に参加されてきました。

会社を代表して、業務を仲間にお願いして参加している以上、「何か爪痕を残さなければ・・・」。

そう考えた柳澤社長は業界情報や技術の習得のみならず、懇親会の場で様々な人と懇親を深めることを重要に考え、かけがえのない人脈を意識的に築いていかれました。

この交流がきっかけとなり、協業ビジネスを始めたり、仕事の依頼が来たりしたこともあったそうで、現在でも良いお客さんになっているそうです。

講師の大学教授とも懇意になり、公私ともに大変かわいがってくれたと目を細めて仰っていました。

養鶏分野への進出
ブロイラーは一羽約3㎏。ほぼ新生児の体重と一緒です。

ある時、懇親会を経て旧知の仲になった知人から一本の電話がありました。

「秋田県の会社が開発した養鶏業向けの装置をリョーシンで作ってほしい。」

柳澤社長は一度はその申し出を辞退しましたが、知人の熱意に押され自社で製造を引き継ぐ事にしました。

引き受けたものの、養鶏業については未知の分野。現物はあるが、設計書がありません。

ほとんどゼロベースからのスタートでした。

リョーシンが製造を引き継いだ機械は「チキンリフター」といいます。

養鶏場で育てられたブロイラーは出荷する際にカゴに集められ、トラックの荷台にそのカゴを8~10段に重ねます。

ブロイラーは1羽、約3㎏の重量があります。カゴの重さを含めると1籠30キロ近くになるそうです。

積み込みの作業は夜間に行うのが一般的だそうで、周囲が暗い中、その重い籠を高く積み上げていく・・・

トラックへの積み込み作業はとても重労働で危険が伴います。

約5年かかりの歳月を経て遂に完成!

チキンリフターは補鳥作業時に砂ぼこりや糞尿が機械に付着する、屋外での使用が前提といった

過酷な環境に耐えうる機構設計をしなければなりませんでした。

特に鶏糞は酸性から時間の経過につれ、アルカリ性に変化する厄介な特性を持っているため、材質の選定に苦労しました。

難しい状況でしたが、試行錯誤を繰り返し、部材や機構を工夫を重ね遂に完成しました。

自走式。キャタピラがついています。
自走式。キャタピラがついています。
トラックや荷台の高さに応じた仕様変更が可能。籠の積載パターンもオーダーメイド出来る。
トラックや荷台の高さに応じた仕様変更が可能。籠の積載パターンもオーダーメイド出来る。
満を持して市場へ投入! その結果は・・・?

自信のある製品が出来ましたが、発売当初、思うような反応はなかったそうです。

その理由は製品を説明するにあたり、養鶏業者の皆さんへのリスペクトやユーザー視点が足りなかったと柳澤社長は振り返ります。

「当初、良いものが出来たから使ってください、機械を使えば作業効率が格段に増しますよというスタンスで販売していました。しかし、現場の声に耳を傾けると、養鶏業者の皆さんは作業効率向上をそこまで追求していない事が分かりました。この売り方では共感が得られないし、何より大変な作業を手作業で行っている皆さんに対してリスペクトが足りていないと気づいたのです。」

「そこで、作業効率アップというより、『危険な重労働を安全で楽にして、養鶏業者の笑顔を増やす機械』というようにPR方法を転換しました。あなた方の行っている作業に対してこの装置は能力的に及ばないけど、この機械を使って大変な作業を少しでも楽してほしいという形です。」

PR方法を変え、営業活動を再開すると九州・東北を中心に引き合いが増えたそうで、現在年間10~12台ほどを目標に販売していきたいと仰っていました。

養鶏業界も例外なく、人出不足・高齢化の波が押し寄せています。

諏訪の地で生まれた「チキンリフター」が全国の養鶏業者のミカタになる事を期待しています!

リョーシンのこともっと知りたい!

リョーシン 柳澤社長オススメのSUWA

大見山

大見山展望台から諏訪湖を一望できる眺めの良い景色がおススメのSUWA。

渓流釣りが趣味で、困難な状況に陥っても乗り切ったら大好きな釣りが待っていると自分を鼓舞し、何度も危機を乗り越えてきたそうです。

会社情報
所在地 〒392-0003 長野県諏訪市大字上諏訪1757
HP https://ryo-shin.studio.site/

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激動する時代に不安を感じる、今の事業に変化がほしい、自社技術の可能性を拡げたい。
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