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家族経営の温かさでお客様を大事に寄り添いながら、
ご先祖様や伝統も大事にする老舗石材店 「石栁北原」さん

家族経営の温かさでお客様を大事に寄り添いながら、
ご先祖様や伝統も大事にする老舗石材店 「石栁北原」さん

2020.09.25

諏訪大社門前 140年目を迎える伝統の石屋 「石栁北原」さん

 明治13年の創業から数え、今年で140年目という節目の年を迎える石栁北原石材店さん。
 諏訪大社上社の近くに事業所を構え、変わらず営んでこられた老舗企業さんです。
今回は、創業から続く理念や取組について、5代目社長の北原大貴さん、そして奥様の美智子さんのお二方にお聞きしました。

石栁北原さん のここがスゴイ!

「仕事に当たる上では、お客様の思いに寄り添うこと、そして、その思いを聞きながら、気持ちに沿った形にしていくことを大事にしている点です」。

もちろん、先代である父の代から、「心に寄り添う墓石店」を目指し、お石塔の設計だけでなく、彫刻や改修、修理を行って参りました。そして、一つ一つ丁寧な仕事を心掛ける気持ちをベースにしています。
現代まで続く伝統もある中で新社長となりましたが、まず、家族経営である当社の強みを生かし、皆で意識を統一するための機会として、会議の場を増やしました。これは、当社にお来し頂いたお客様の思いを従業員で共有するためです。
それまでは、先代が窓口となりお話を聞いて墓石を立てるという流れだったのですが、このスタイルを、「どなたがお客様なのか」、そして、「お客様各々がどのような依頼をされたのか」まで従業員全員で共有し、今までよりもさらに、お客様へ寄り添い、支えられるようにしました。

「お客様の気持ちに寄り添う」経営を受け継ぐ北原社長さん。優しい語り口にも、自然と熱が入ります。
「お客様の気持ちに寄り添う」経営を受け継ぐ北原社長さん。優しい語り口にも、自然と熱が入ります。
気持ちでだけでなく、「手」でもお客様を支えます
気持ちでだけでなく、「手」でもお客様を支えます

石栁北原さん のここがスゴイ!

(隣に座ってらっしゃる奥様から)「展示場をリニューアルしたんです」との声も聞こえてきましたが?

 

 

はい、そうでした(笑)。もう一つの大きなポイントが、店舗のリニューアルをした点ですね。前回(平成28年)の御柱の前の年になりますが、1年以上かけて石材の展示場を新しくしました。それも、ただ新しくした訳ではなくて、茅野市で店舗設計を手掛けているイマージさんに入ってもらい、お客さん向けにきれいな展示になるよう、墓石の「ブランディング」から見直してリニューアルをしたんです。

展示場に併設された茶屋。たしかに、ここでならお客様も安心して寛げそうです(※現在は、コロナウィルスのためお休み中ですが、近日再オープン⦅詳細は未定⦆の予定とのことです)

墓石というと、どうしても暗いイメージもあるかと思いますが、そのイメージを、明るくて誰でも入りやすい雰囲気にしました。雰囲気だけでなく、良いモノを提供できる場としても、墓石が雨ざらしにならないような展示ができる店舗にしています。
それに加えて、展示場のすぐ隣に茶屋も併設しました。これも、お客様が来訪しやすい環境作りのためでもありますが、そればかりではありません。お客様に寛いで頂き、話をしやすい場作りのため、思いを共有する場としてリニューアルに合わせ整備しました。
ただ、聞き役は私ではなく、妻や母(先代・現会長さんの奥さま)といった女性の役割としてお願いしています。そして、お客様の気持ちに合わせた制作は私と、役割を分担しています。
これも、私たちが、販売を第一目的にしているのではなく、お客様の気持ちを理解することを第一にしている家族経営であるが故のスタイルだと思っています。

石栁北原さんが感じる「諏訪」 のここがスゴイ!

「そうですねえ、歴史と田舎っぽさ(笑)が残っている点ですかね。
歴史的な物には、磨けば光る所が沢山あると思っています」。

 

 

その一つが石積みです。

昔は、田んぼの畔や水路などにも利用されていましたが、

今では中々見られなくなりました。そんな石積みを、小川

や「せぎ」のままの風景として残したいですよね。

北原さんも関わって修復工事が完成した後の、法華寺の石垣です。思わず見惚れてしまいますね。

もちろん、ただ残すだけではなく、昔のノミや工具を使った「石積みを直す技術」を、昔の工法のままで次の時代まで残したいんです。やはり、地元の歴史的な物を、その地元の人が直すことが重要だと思っていますので。
そのために、石積みの技術の取得に向けて、文化財石垣保存技術協議会にも加入しながら、勉強に取り組み始めているんですよ。
例えば、当社が所在する諏訪大社の上社付近には、昔から残っている良い物が沢山あります。そうした昔の物を自分の技術で大事にすることで、地域活性化に貢献できればと思いますね。
昨年には、法華寺の石積みの組直し修理もしました。当社からも近所ですから、もし宜しければ帰りがけに見て行ってください。

 

石栁北原さん のここがスゴイ!

「昔の物や伝統を大事にする点ですね」。

子どもも一緒になって家族全体でお墓参りに行って、ご先祖様を敬う習慣も、昔からの大事な習慣ですよね。ただ、昔は当たり前だった習慣かもしれませんが、今では「墓じまい」も増えて、家庭の中でもお墓にお参りするという機会も減っていると思います。
そのような時代ですが、「先祖を敬う気持ち」は大切ですし、何より身近なパワースポットです。当社の仕事の一部として、大事さを伝えていければとも思っています。

石栁北原さん のここがスゴイ!

「当社の屋号である『石柳北原』の『柳』の字を『栁』にしました」。

これも、「先祖を敬う気持ち」に通じるかもしれませんが、当社の屋号である「石柳北原」の「柳」の字を、自分の代で「栁」にしました。この字は、初代が使用していた字に当たります。実は、そのきっかけが凄い偶然というか(笑)。
自分の中で、以前から狛犬を作りたかった気持ちもありまして、実際に作成したんですが、狛犬の脚の指を4本にしたんです。なぜなら、それが一般的だったからです。ですが、ちょうどそのタイミングで、偶然、「安曇野市の神社(伍社宮)に『北原栁太郎』と刻印が入った狛犬が見つかったが、そちらの北原さんと関係あるのか」と連絡があったんですよね。
まさに、その狛犬が、初代が作った作品だったのですが、その狛犬の指の数は五本でした。それで、「もしかすると、これは初代から『指の数を間違えるな』との指導だったかも」、と受け止め、先祖である初代を大事にする意味で「柳」の字を「栁」に換えたんです。

ご先祖様である、初代「北原栁太郎」さん作による狛犬。今にも吠えだしそうな迫力です。

最後に、今後の目標についてお願いします

7年前に作成された見事な「龍」の像。さて、現在の置き場所はどちらでしょう?(※答えは、この次のコーナー、「石栁北原さんのこと もっと知りたい!」の中にあります)

「日々挑戦」の気持ちを忘れてはいけないと思っています。

人生常に勉強ですし、終わりが無い。「そこで終わり」と思った時点で

進歩は無いかな、と。

それに、お客様から「こんなことできる?」、という依頼に応じたい気

持ちもです。どんな小さなことであっても、自分にできることはしたい

気持ちがあるからですよね。

これからも、地域に根差した技術者でありたいと思っています。

本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。

石栁北原さんのこともっと知りたい!

施工された作品や石彫についてお聞きかせ下さい

大きな作品としては、母校である岡谷工業高校の創立100周年に合わせて作成した記念碑(※写真参照)があります。ちょうど、東日本大震災のあったタイミングで、被災地支援の目的もあり、また、かつて製糸が盛んな時代に岡谷市と経済交流のあった歴史も踏まえ、福島県で産出された紀山石を使用しました。この石がとても大きくて工場内に入らず、屋外にテントを張って作業しました。

「石積みの技術も含め、石の像を彫る技術者も、諏訪の石工さんの中で現社長さん一人だけなんです(奥様)」。

その他では、諏訪市湖岸通りのフランス料理店であるトロアヴァーグさんでは、ご主人のイラストから、ご主人を模した石の像を作成しました(※写真参照)。お客様からも親しみを込められているようで、作った側としては何よりですよね(安山岩で造られたとのことで、トロアヴァーグさんによると、「安産」にかけて妊婦さんがご主人像のお腹をさすることも多いのだとか。ご利益がありそうですよね)。
金子ゆかり・現諏訪市長さん宅のお庭にも、「龍」の像を飾らせてもらってありますし、不動明王や五輪塔も彫っていますね。

石栁北原さんオススメのSUWA

北原大貴さん、美智子さんがお勧めするスポットは、「片山展望台」

「片山展望台」です。

実は、そこから見える諏訪の景色がとても良い「穴場」なんですよ(笑)。

 

そこからだと、普段は分からないですが上社線の真っ直ぐな道路も見て取れます。

今年はコロナウィルスの影響で中々外出ができませんでしたが、ゴールデンウィークの機会に子どもと一緒に家族でハイキングに行ってきました。なので、山とはいえ上りやすいのもお勧めな点ですね。

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激動する時代に不安を感じる、今の事業に変化がほしい、自社技術の可能性を拡げたい。
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