SUWA仕事場図鑑

“相談されればタダでは帰さない”
松一の持つ高い製造力とは

“相談されればタダでは帰さない”
松一の持つ高い製造力とは

2020.03.01

株式会社 松一

MATUICHI co.,Ltd

株式会社松一の創業は昭和2年、90年を超える老舗企業です。もともとは「松一商店」という雑貨屋から始まり、元フィルムメーカーの技術者でもある2代目・正太郎さんの元、腕時計部品加工業として再出発することに。それからも自動車部品の2次加工など、時代の流れに合わせてものづくりの対象を変化させてきました。今では大学や企業の研究に使われる実験機器の設計から加工、組み立てや、汎用品の改造などを行っています。“相談されればタダでは帰さない”精神で、多くのメーカーや製造業者に頼られている松一。そんな中で、代表取締役社長・松澤さんがこだわっているのは、研磨技術です。

松一 のここがスゴイ!

切削から研磨、加工…完成まで
全工程請け負いで得た力強い経験値

研磨の技術が抜群に長けている、と諏訪でも一目置かれている松一。そもそも研磨には、対象物に装飾的な輝きを与えることはもちろん、凸凹を滑らかにすることで汚れにくく、また錆びにくくなったり、「微細バリ」が混入するのを防げたりといったようなメリットがあります。微細バリとは、加工する際に生じる素材の出っ張りのこと。松一は機械では取り除けないレベルの微細バリを人力で、顕微鏡を使って取り除く技術も持っています。また、刃やドリルを使って素材を切り出す「切削」、加工した材料の組み立てなど、すごいのは研磨だけではありません。松一は、ものづくりを完成へと導くプロなのです。 

「磨きだけだったとしたら、生き残っていませんよ。うちのもうひとつの強みは、クライアントから図面を1枚もらえば完成品にして納められること。切削も研磨も組み立ても…全て請け負います」

代表取締役社長 松澤正明氏と、マネージャーとして一緒に松一を切り盛りする妻の奈美さん

松一がこのノウハウを持っているのには、腕時計の部品である裏蓋の加工をしていた時代の経験値が大きく関わっています。国内腕時計の一ブランドの裏蓋は、その約90%を松一が加工していたという実績も。

完成まで請け負うということには、同時に“在庫が持てる”というメリットもあるそう。例えば時計の裏蓋で言えば、刻印だけは違うけれど機能寸法は同じであったり、磨きの仕上げが違うだけだったりして、共通化されている材料や工程が多いのです。松一は時計部品加工をしていた時、1カ月分の在庫を常に持ちながらやっていたので、注文を受けやすく価格も一括で抑えることができたそう。また、納期も調整可能でロスも出にくい。松一側にもクライアント側にも嬉しい、 win-winの方法です。

多くの製品が生み出された松一の工場

「諏訪はどちらかというと切削は切削屋さん、研磨は研磨屋さんというように、それぞれが請け負う形になっています。うちはたまたま先代からの繋がりで、腕時計部品加工という特殊なものをやらせてもらっていたので、研磨を含む全工程持つことができているんです。だからこそ今でも、研磨という技術を残すことができています。僕より若い人で研磨をやっている会社は少ないですよ」 

そして、松一が磨きの技術を鍛えたのも、この腕時計部品加工でした。はじめは時計の磨き方だけを習得していた松澤さんでしたが、磨きの魅力に惹かれ、この技術を究めたいと思ったそうです。その情熱は、技術研究や試作品開発などを行うための「技術開発研究室」を設立するほど。

様々なマシンを使い、クライアントのリクエストに応える

松一 のここがスゴイ!

素材によって磨きを見極める
300以上の技術を持つ松一の研磨哲学

では具体的に松一の磨きのすごさとは、どういったところにあるのでしょうか。松澤さんにお話を聞くと、それは主に研磨の方法と匠の技術であることがわかりました。 

「古い研磨技術のやり方をしていることが、ひとつの強みです。新しい研磨はケミカル系の研磨がだいぶ出てきています。面を溶かしてしまう方法ですね。ですがそこに行く前に手の技で表面を綺麗にする、一番最初に手を付ける時はバフ研磨っていうやり方でないと、本当に納得のいく仕上がりにすることは難しいと思っています」

バフ研磨とは、綿やフェルトで作られた「バフ」と呼ばれる道具を、回転させながら金属に当てて研磨する方法。「私の研磨の動きは常に一定なんです」と教えてくださった通り、松澤さんは特にこのバフ研磨の技術が高く、後述の通り研究データによる科学的なお墨付きです。また、素材によっても研磨の最適解は変わってきます。

「研磨剤の種類や付ける量、研磨する際の押し圧も変えています。押し圧が強いから良く磨かれるというわけでもなく、バランスが重要です。技のバリエーションは300以上ありますね」

時計の製造拠点が中国に移り、顕微鏡下でのバリ取りや実験機器の製造を行うようになってからも、“松一の研磨は技術が高い”と口コミで広がっていきました。松澤さんはその間にも技術を究め、ついに平成30年度の「信州の名工(長野県卓越技能者知事表彰)・金属研ま工」にも認定されました。この認定は長野県知事によるもの。卓越した技能を持つ職人に贈られる称号です。

県からも認められる匠の技術。次はそれをどう次世代に伝承していくか、松澤さんは考えていました。

研磨技術にはこだわりのある松澤社長。磨きの魅力についても熟知している。

松一 のここがスゴイ!

バフ研磨の技術を次世代へ伝承
大学で行う「匠の技プロジェクト」

「今、学生として兵庫・姫路の大学院で3年間“匠の技プロジェクト”に参加して、論文を書いているんです。技術伝承についてのプロジェクトで、バフ研磨についてデジタル化しています。僕の習っていたころは、親方がやっているのを見て覚えるという世界だったけれど、全部数値にして“見える化”すれば、技術伝承をする期間を短くできるかなと。5年かかったところを3年で私の技術の7~8割まで持っていけないかとか、そのためのデータを取っています」 

今でこそ精力的に活動している松澤さんですが、始めは技術を伝えたいとは思っていなかったそう。しかし、一緒に共同研究をしていた大学の先生に呼ばれて通うようになった姫路の大学院で「匠の技プロジェクト」の存在を知り、技術伝承の重要さを体感したと言います。

「バフ研磨の技術者も、私が一番若いくらい。でも、大手企業などバフ研磨を求めているところがある。需要はなくならないので、研磨が必ずないと立ち行かなくなってくると確信しています。日本の技術は高いのだから、これから量産の時代が終わりつつあっても、製造業のような“つくる”技術を残していくべきだと思います」

松澤さんの大きな手の中に記憶された研磨の技術をデータ化し、技術伝承に役立てたいと考えている

最終的には大学の研究データをAIに搭載できるまでにしたいという松澤さん。しかし、AI化が実現したとしても、例えば新しい素材を研磨する時には必ず熟練工が工程を構築しなければならない、など、技術を持った人を絶やしてはいけない研磨という技術の話をしてくださいました。 

「古いつくりかたは量産には合わないのかもしれないけれど、いいものはできる。伝統工芸の人たちは技術を残そうと動いているが、工業系でそういう人はあまりいない。だから僕ひとりくらい、こういうことやっていてもいいんじゃないかな、と。自分がケーススタディのひとつになればいいと考えています」

松一のこともっと知りたい!

研磨の魅力とは?

「ピカっとなったものを見ると、皆さん一瞬で顔がほころぶんですね。その顔が見たくて研磨をしているのかな。日本人は特に国旗も日の丸だし、太陽とか光るものに魅入られてるところがある。生物学的に見ても、魚でも何でも光るものの方に集まるっていう特性はありますよね。要は生き物って、9割以上は光るものが好きなんです!」

松澤さんは諏訪で行われた工業メッセで、変色してしまった指輪の磨きサービスをしたり、子供向けに研磨のワークショップを開いたり、様々な取り組みをしています。磨けばピカピカになって、人の喜ぶ顔が見られる…だから研磨はやめられない、と教えてくださいました。

自社製品について教えてください

松一は、「CURIOUS」「誕護 (tan:go)」そしてSUWAデザインプロジェクトで誕生した「suwa megami」と、3つの自社ジュエリーブランドを持っています。この自社製品には実は、東北復興への想いが込められていました。

「東北復興支援でうちの研磨が何か役立てないかなということで、とCURIOUSと誕護 (tan:go)を作りました。材料のコバリオンは、津波のあった被災地である岩手県・釜石で生まれました。この材料を使うことによって雇用も生まれるし、少しでも助けになれば。CURIOUSから数えるともう3年になります。suwa megamiは東京での展示も決定しました」

そう語る松澤さん。SUWAデザインプロジェクトでも、デザイナーの鶴本さんが注目したのは、人工関節などにも使われるこのコバリオンという材料だったそう。少しでも多くの受注をして、手助けをしたいとお話してくださいました。

松一オススメのSUWA

じゃぱすた

株式会社松一の代表取締役社長・松澤さんのおすすめスポットは、いろりを囲む居酒屋「じゃぱすた」。ここでは、唐揚げなど定番の居酒屋メニューのほかに、鹿肉や鯛のからすみ、鯉の刺身から蛙肉、カメの手まで、ちょっと珍しい料理の数々をいただくことができるんです。さらに諏訪盆地の地酒を飲み比べもできるので、諏訪ならではのグルメを楽しみたい方には間違いなしのスポット。

店長の人柄もユニークなお店です。公式Facebookページもぜひご覧下さい。

  • 住所 : 〒394-0044 長野県岡谷市湊5-13-7 パウワウビレッヂ 1F
  • 営業時間 : 17時30分~23時30分(22時30分LO)、日曜・祝日は17時~22時
  • 定休日 : 月曜日
  • 公式Facebookページはコチラ

会社情報
所在地 〒392-0016 長野県諏訪市 大字豊田文出230−1
交通アクセス JR上諏訪駅から車で約9分
ホームページ http://www.matsu-ichi.co.jp/
電話番号 0266-52-1317
事業概要 金属製品、精密機器
主な取引先 豊田中央研究所、兵庫県立大学など、大手企業研究所や大学の研究機関

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激動する時代に不安を感じる、今の事業に変化がほしい、自社技術の可能性を拡げたい。
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