ものを語る

共進の最終製品への挑戦-インパクトゾーントレーナー開発物語

共進の最終製品への挑戦-インパクトゾーントレーナー開発物語

2024.10.01
中島部長と林技師 中島部長と林技師

インパクトゾーントレーナー開発秘話

令和5年度諏訪市新技術・新製品開発事業補助金の採択案件であるゴルフ練習器具「インパクトゾーントレーナー」が令和6年6月8日に遂に発売となりました。
今まで部品加工を生業としてきた「株式会社共進(以下、共進)」がなぜ最終製品開発に挑戦しようと思ったのか。
開発を担当した共進の中島技術部長、技師の林さんに話を伺いました。
最終製品開発に挑戦しようと思ったきっかけ

キッカケはゴルフレッスン教室!?

中島技術部長
実際にゴルフクラブにインパクトゾーントレーナーを脱着する様子を実演してくださる中島技術部長

弊社の従業員である林がたまたまプライベートで岡谷市にある青山加織プロが監修するゴルフレッスン教室に通っていました。

レッスンの場で、林が青山プロから「韓国に大会で遠征した際に、ナショナルチームのメンバーがアライメントスティック(※)とゴルフクラブを一緒に握ってスイングフォームの練習をしているのを見た。これからこのような練習法が日本でも流行ると思うが、ゴルフクラブとアライメントスティックをしっかりと固定出来ないと効率の良い練習にならない。しっかり固定出来る器具を作れないだろうか。」と相談を受けました。

たまたま林が金属加工の経験が豊富な熟練技師であり、かつゴルフギア好きであったため、「これは弊社の加工技術であれば良いモノが作れそうだ」と考え、自分のところに話があがってきました。

※ターゲットライン(ターゲットとボールを結ぶ飛球線)に対して、フェースや肩、足のラインを平行に構えることをアライメントと言います。ゴルフクラブと一緒に持つことで、ボディターンの練習をするためのスティックのことをアライメントスティックと言います。

初めてのゼロからの開発

探り探りの開発

中島技術部長
3Dイメージを用いて技術的工夫点を説明してくださる中島技術部長

まずはじめに類似製品が無いか調べてみました。既にゴルフクラブに被せる形で固定具を装着する製品が何点か存在していましたが、いずれもグリップの種類の豊富さに対応しきれず、全てのゴルフクラブで利用することが出来なかったり、しっかりと固定出来ないといった難点が存在しました。

そこであらゆる太さのグリップに対応でき、ブレずにしっかり固定出来る製品を開発する必要があることを認識しました。固定に関しても出来るだけ動作数を少なくして簡単に脱着出来るように考える必要がありました。

弊社は元々部品加工業を営んでおり、基本的にはお客様から図面をいただき、どのように工夫すれば図面通りに製品を製造出来るか考えることには慣れていますが、最終製品を開発した経験は今までなかったため、図面も何もないところから考えることはとても大変でした。工業製品はどのくらいの公差?何ニュートン?と数値で「こうあるべき」がわかりますが、最終製品は数値で「こうあるべき」が表せず、あくまでユーザーの使用時の感覚で良い製品か否かが決まります。今まで違う脳みそをたくさん使いました。(笑)

あらゆるグリップに装着でき、かつブレずにしっかりと固定するために部品の角度にものすごく細かくこだわり、何度もトライ&エラーを繰り返しました。

当初は装着具とアライメントスティックは一体型で構わないとの依頼でしたが、アライメントスティックが折れやすいという実態が見えてきたこともあり交換できるように別体式としました。

スイングフォーム練習の際に装着具の重さから練習に支障が出てはいけないので内部をかなり肉抜きし軽量化に努めました。

アルミを主としているのですが、グリップが変な角度で入るとカジってしまいスムーズに回らない現象が発生したため、アルミに表面処理(アルマイト処理)をすることでカジらなくなるようにしました。

このように様々な点で細かな調整を繰り返し、完成に至りました。

普段お客様から頂いた図面をもとに試作を繰り返す場合、都度お客様に確認をしないといけないため、時間がかかりがちですが、本開発においては、間に入ってくれた林が熟練技師で金属加工に精通しており、かつゴルフ歴20年以上で今でも毎年50回以上ラウンドしておりゴルフへの理解度も高いため、自分と青山プロの間を上手く取り持ってくれ、とても短期間でスムーズに開発を進めることが出来ました。色々学んでいるとどこかで活かせるもんだな、と思いました。(笑)

手前(青色)が試作品で奥(白色)が完成品。アライメントスティックが脱着できるように改良されました。
手前(青色)が試作品で奥(白色)が完成品。アライメントスティックが脱着できるように改良されました。
右側が試作品で左側が完成品。見えない部分を肉抜きすることで、軽量化し使いやすさを向上されました。
右側が試作品で左側が完成品。見えない部分を肉抜きすることで、軽量化し使いやすさを向上されました。
左側が試作品で右側が完成品。白アルマイト処理をすることで、カジらなくなりました。
左側が試作品で右側が完成品。白アルマイト処理をすることで、カジらなくなりました。
切削加工の様子
切削加工の様子
レーザー刻印の様子
レーザー刻印の様子
青山加織プロとの打ち合わせの様子(写真提供:株式会社共進)
青山加織プロとの打ち合わせの様子(写真提供:株式会社共進)
共進の最終製品への挑戦~今後について~

初めての最終製品開発を経て

使いごごちを確認する林技師
完成した製品の使い心地を確認する技師の林さん

6月8日に無事「インパクトゾーントレーナー」を発売することが出来ました。

弊社は今まで「地域連携」して何かを行うということをやりたいという気持ちがありました。また、社長より自社開発の最終製品が作れないかと以前から言われていました。しかし、中々踏み出せずにいたように思えます。今回、従業員の林が縁を繋いでくれ、諏訪地域で活動するプロゴルファーと連携して最終製品を自社開発することが出来ました。

図面も何も無いところからゼロベースで製品を開発するということで、はじめは不安もありましたが、現場と事務方(設計)が一体となって完成まで漕ぎつけることができ、今は達成感で満ち溢れており「やってよかった」という気持ちで一杯です。共進としての開発力もワンランク上がった気がします。

今後も諏訪地域で連携して色んなモノの開発に挑戦していきたい、と考えています!

完成した「インパクトゾーントレーナー」
完成した「インパクトゾーントレーナー」
「インパクトゾーントレーナー」の完成を金子ゆかり市長に報告する様子
「インパクトゾーントレーナー」の完成を金子ゆかり市長に報告する様子

モノがたりに参加した
立役者からのコメントComment

株式会社共進 中島 茂元

既に第二、第三の矢を仕込み中です。ご期待ください!

profile

1966年愛知県名古屋市生まれ。

趣味のマウンテンバイクが高じて山梨県北杜市に移住。前職の経験を活かせると考え、共進に入社。

家族全員が自転車好きで、長女は2014年ユースオリンピックで日本代表に選ばれ、次女はエリミネーター初代日本チャンピオンだそうです!

中島部長バストショット

この記事をシェアする

  • Twitterでシェア
  • Facebookでシェア
  • LINEでシェア

お問い合わせContact

「諏訪で新しいことがしたい」。そんな思いに応えるのが、わたしたちのミッションです。
激動する時代に不安を感じる、今の事業に変化がほしい、自社技術の可能性を拡げたい。
諏訪の技術を世界へと伝え、異分野と繋ぐことで
「ものづくり」をアップデートするお手伝いをさせていただきます。

contact_img